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遠藤誉「毛沢東」……人類史上最大の殺人者は「正直」だった

Posted by Ikkey52 on 01.2019 文芸批評   0 comments   0 trackback
過去を振り返ってみると、わが日本人も自国史の恣意的な解釈を何度も許してきた。ほとんどマンガの皇国史観をありがたく戴いていた戦中の恥ずかしい国民体験もある。一方、昭和20年の敗戦以降GHQに押し付けられてきたいわゆる戦後史観の厚化粧が剥がれ、歴史の再構築がはじまったのもそう古いことではない。

 だからといって、歴史的真実はひとつしかないのだから、近隣諸国のあきれた史実歪曲を黙ってみているのは辛い。例えば、大日本帝国と合邦していた南北朝鮮があたかも抗日戦争で勝利し独立を勝ち取ったかのような言説であり、日中戦争で日本が敗北を認めた相手が、共産党独裁下の中華人民共和国だったといった言説だ。各建国記念日を見れば、それらの言説の欺瞞は子供でも分かるのに、なんとも残念だ。

 事象の呼び名ひとつをとっても誤解のタネになりがちだ。「日中戦争」と呼ぶから、日本対中国という単純な構図に見えてしまう。そうではなく、日本の中国侵略の背後には、それ以上に長い中国内戦が隠れており、したがってステージの上には、日本軍(汪兆銘政権)、蒋介石国民党軍、そして毛沢東共産党軍の三者がいた、というのが本書の見立てだ。

 しかも三つ巴の闘いの最中にあった当時の中国共産党は基本的にコミンテルンの傀儡そのものであり、非エリート党員の毛沢東がのし上がるのにはモスクワの影響力も削ぐ必要があった。毛にとっては四つ巴だ。党内闘争を勝ち抜き、最終的に内戦の勝者となるためには、権謀術数の限りを尽くすしか、手がなかったのだが、天才的策略家の彼はそれをやってのける。

 結論からいえば、日中戦争終結まで、毛に率いられた中国共産党は自軍を日本軍との戦いに注ぎ込んでいるように大宣伝しながら、実はアリバイ的にしか関わらず、体力を温存した。国民党内に多数のスパイを放ち、掴んだ情報は日本側に売り渡し、国民党の疲弊を助けた。ついには、日本側に極秘停戦提案さえ持ち掛けている。しかも、画策通り内戦の勝者になると、かつて穢れ仕事をさせた部下をことごとく粛清した。史実の語り部たちの抹殺で、以降、毛の後継者たちは歴史を自由に脚色できるようになった。

 著者の遠藤誉は、旧満州からの引き揚げ経験を持つ女性物理学者。中国語は現地仕込みで、本職は科学者だから一次資料に徹底してこだわる。兵士の立ち振る舞いを通して、国民党軍と八路軍(中共軍)の違いまで知る人だから、歴史の虚偽を見破る分析は深く緻密だ。感情に全く流されていない。

 遠藤によれば、毛が殺した中国人民は少なく見積もっても7000万人。しかもこれは、新中国になってからだけの数字だ。当然、「人類史上最大の殺人者」、「極悪人」と断ずる書物も出るわけだが、遠藤は「それを悪と見るか否かは、書き手側の主観の問題だ」とする。戦後、訪ねて行った日本人に盛んに日本軍への感謝を口にした毛沢東。遠藤はそれを皮肉でなく、正直な吐露と捉える。しかし、不都合な歴史を隠蔽するための神話づくりに中国執行部が今もなお邁進している姿は罪作りだ、ときっぱりと断罪している。

 中国本土で武装解除された日本軍の将兵に、報復心でなく東洋的徳を持って報いた蒋介石の人間力は語り草だが、帝王学と権謀術数があって、人民愛、同朋意識に欠けていた毛沢東が新しい中国皇帝となり、死後も貶められない秘密が語られている。論旨あくまで明快で、目が覚める一冊
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