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海底トンネルとバカ査定

Posted by Ikkey52 on 09.2012 事件・事故   0 comments   0 trackback
  「昭和の三大バカ査定」というのがある。国の財布を握る大蔵省(現財務省)の主計官がかつて、税金の無駄遣いの典型例として戦艦大和、伊勢湾干拓、それに青函トンネルを指してそう呼んだ。公金を打ち出の小槌と勘違いしているような利益誘導型政治家が跋扈して、官僚側がほぞを噛んでいた時代の言葉だ。
  たしかに青函トンネルは、いつまでたっても新幹線が走らないから、利便性を年々高める航空路の陰に隠れて存在感は薄かった。巨額を投じた見返りはあったか、と問われれば反論しにくかった。局面が変わったのは昨年秋。ようやく北海道新幹線着工にゴーサインが出たのだ。供用開始はまださきだが、青函トンネルにようやくリベンジの機会が回ってきそうだ。

  北海道の福島、青森の竜飛、双方から掘り進んだ青函トンネルの本坑が一本につながったのは、1985年3月のこと。坑内での貫通式を取材するため、私は初めて坑道に足を踏み入れていた。坑内はひどい湿度で相棒のカメラマンはすぐに曇るレンズに悪戦苦闘していた。天井から水滴が落ちヘルメットを叩く。ものは試しと水滴を舐めてみた。紛れもなく塩分がある。海水だ、と感じた瞬間、名状しがたい恐怖が湧きあがるのを感じた。自分の頭上に津軽海峡があることが強く意識された。その道のプロがさまざまな力学計算を重ね、土木技術にしても粋が傾注されている。トンネルの安全性に疑う余地はないはずなのだが、見えない重圧に金縛りの脳は理屈を受け入れない。


  倉敷市のJX日鉱日石エネルギー水島製油所で、掘削中の海底トンネルに浸水し、5人が生還しなかった。驚いたのは、掘り進んでいた横穴が海底下5メートルほどのところに位置していたこと。あくまで素人考えだが、出水箇所上部の水深が30メートルだとすれば、海底では1平方センチあたり3キログラムの重みがかかる。これを1平方メートル当たりに換算した重さは実に30トン。それを厚さわずか5メートルほどの岩盤で支えようとすれば、そもそも岩盤には相当な強度が求められるのではないか。ちなみに青函トンネルは海底下100メートルもの深部にあるから岩盤の厚さは桁違いだ。

 青函トンネル取材のずっと後になって、某ゼネコン関係者と知り合った。「そもそも何十キロも離れた地点の両側からトンネルを掘り進み、ぴったり合うというのが、門外漢には信じがたい」と敬意を表したところ「大きな声では言えないが、貫通はしたものの、だいぶんずれていた、というのはままある話」と聞かされ、意外に思ったことがある。古くは丹那トンネル、黒部ダムなど難工事であればあるほど、美化されすぎた伝説が残りやすい。日本の土木工事の水準が低くないことはわかるが、現状はどうなのだろう。

 話が脇に逸れた。水島海上保安部の測量船が海上からソナー調査したところ、出水箇所付近で直径20メートル、深さ3.5メートルの陥没が見つかった。かつてはなかった陥没だというから、トンネル工事との因果関係は濃厚だ。それにしてもこの展開、単純といえばきわめて単純で、なんともお粗末というほかない。

 
  JX日鉱日石エネルギーは、アメリカのイラン制裁措置のあおりを受ける形で、今年4月以降、イラン産原油の輸入契約を更新しない選択をしている。新たに生じる不足分の原油はイラン以外に求めなければならない。企業としては、それでなくても逆風のなかで、出水事故は起きた。巨大企業JX日鉱日石エネルギーにとって、こんどの事故は会社の屋台骨を揺るがすような規模の出来事ではないだろうが、いま社内で密かに、倉敷の海底トンネル掘削が「平成のバカ査定」呼ばわりされていないか、部外者ながら心配になってしまう。
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父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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