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ビザがあろうと、なかろうと

Posted by Ikkey52 on 07.2019 世界   0 comments   0 trackback
 ジャーナリストの常岡浩介が外務省から旅券返納命令を受けた。 (https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/02/05/)
 内戦でたいへんなことになっている中東・イエメンの取材を計画し、隣国オマーン経由で現地に入ろうとした。事前準備としてイエメンはもちろん、トランジット先のオマーンのビザも取っていた。先月14日、オマーンの首都マスカットの空港に着いたのだが、なぜか入国を拒否され、日本に送還された。常岡は諦めず、今度はスーダン経由でイエメン入りを目指した。スーダンのビザを取得して今月2日夜、羽田から出国しようとパスポートを機械にかざしたら無効化されていた。その夜のうちに、羽田で外務省の旅券返納命令書のファックスを手渡されたという。旅券法第13条でいう「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」、パスポートは外務省に返納しなければならず、怠った場合の罰則はけっこう重い。
 
 常岡は長崎放送記者からフリーとなり、イスラム諸国の戦場で取材経験を重ねるうちイスラム教に改宗。ロシアのインターファックス通信から「チェチェン国際テロリスト」と名指しされたことがある。ロシア、パキスタンの秘密警察やクルド人自治機関に拘束されたほか、イラクからも強制送還を食らっている。日本でも北大生がISに志願したとされる私戦予備容疑事件に連座して警視庁にも身柄を取られるなど、「お騒がせジャーナリスト」として知られる。
 
 今度の旅券返納命令は、イエメンから国外退去処分を受けた「好ましくない人物」だから、パスポートを使えなくした、という風に見える。これで常岡は、事実上イエメンはおろか、日本から出ることができなくなった。
しかし、お騒がせ人物というだけで、パスポートを取り上げるのは乱暴だろう。ブラックリスト上の国際テロリストでないと確認が取れたから、イエメンもオマーンもスーダンも彼にビザを発給したのではないか。そもそもパスポートは所持人の自国政府による身元保証であり、個人の思想信条を問うものではない。外国渡航目的として取材が禁じられているわけでもない。トラブルの未然防止を図るため、日本政府が旅券法を都合よく使ったのなら、それは公権力の乱用というものだ。常岡は、経由地オマーンからの理不尽な強制送還の陰に、現地日本大使館関係者の容喙があったと疑っている。

 ビザがあっても入国を果たせなかったのが常岡なら、ビザを見せろという国の一角を「ビザなし」で歩き回ったのは金倉孝子だ。彼女はシベリアのクラスノヤルスク国立大学で日本語を教える勇気ある女性だ(http://deracine.fool.jp/russia/z_kanakura/kanakura05.htm)。旅行好きで、驚くような奥地までロシアを知っている。
 ある年の冬休み、モスクワからチェコのプラハまで国際列車の旅を計画し、地元の旅行会社に団体パック料金を払い込んだ。ベラルーシ、ポーランドを通ってプラハに入る行程だ。ロシア在住の外国人である金倉はロシアの出入国にいちいちビザがいるが、しっかり用意した。その代り、日本人パスポートの彼女は、チェコの滞在ビザもポーランドのトランジットビザもどちらも必要ないと喜んだ。ロシア人は逆で両国のビザがいる。ただ、ベラルーシは旧ソ連であり、ロシア人はビザなし入国が可能だ。ロシア人のつもりで普段暮らしている金倉はそれをうっかり見落としていた。旅行会社側からの念押しも全くなかった。
 
 ロシアからベラルーシに入国するのにチェックすらなく、ベラルーシからポーランドに入る際にやっと検査がある。国境の街ブレストでビザの不備を指摘され、列車から一人降ろされても、金倉はしばらく何か起きたのか理解できなかった。拘束はされなかったが、あいにく日曜でトランジットのビザを発給してくれるという警察署の窓口も開いていないから一泊しなければならない。ブレストはトロツキーがドイツと単独講和交渉を行った場所として世界史に名を遺すが、かといって別段観るものもなさそうだ。それでも街をほっつき歩く。歩きながら、妙な思いにとらわれる。そもそもトランジットビザを持たずに、ぶらついているのは、合法的なんだろうか。「ロシアとベラルーシの国境を越えて、ベラルーシに入国し、ベラルーシ国内をずっと横切って、ベラルーシ国境からポーランド国境へ出るという時、ストップされて、そこで、こんなふうに自由に動き回れるなんて、良く分からない国です」。
 
 遅れてプラハ旅行の一行に合流し、無事クラスノヤルスクに戻った金倉は、旅行代理店に損害賠償を請求した。旅行代金にはビザ関係費用も含まれると旅行引き受け書に書いてあったからだ。同時に彼女は地元の複数の代理店にも問い合わせてみた。多かった答は、団体旅行のトランジットの場合は例え日本人でもベラルーシのビザを取る必要がない、というものだった。教え子の母親が弁護士で、無料で訴訟を起こしてやるというので、金倉は委任状を渡した。勝算は半々とのことだが、果たしてどうなったか…。
 
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Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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