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君子豹変す…歴史が証明したジッドの確かなノンフィクション執筆力

Posted by Ikkey52 on 24.2017 文芸批評   0 comments   0 trackback
 1969年、すでに私兵としての右翼組織「盾の会」を養っていた作家三島由紀夫は、新左翼の東大全共闘と直接対話に臨み、「ひとこと『天皇』と言ってくれたら、自分は諸君とともにバリケードに立て籠る」とリップサービスした。ただし、誰も真に受けはしなかった。日本の文壇には「転向」という特有の厄介な論点があったとはいえ、名のある作家のなかでも政治的立場を鮮明にしている人物が、そう易々と物の見方を変えるわけがないからだ。

 1936年夏に仲間の文学者らとソ連国内をしばらく旅したフランス人作家アンドレ・ジッドは、けして「易々と」ではなかったが、それまでのソ連に対する見方をきっぱりと捨てた。同じころ、遠い異国の日本で全集が二社から出るほどの著名人だ。『ソヴィト旅行記』は、まだ見ぬソ連という国に希望を見出していたジッドが、それを自身の目で確かめようと虚心坦懐に国情を取材した結果、認識の大きな誤りに気づき、見解変更を正直に綴れば、自分のステータスにとって必ずしも利益にならないと知りながら、それでも書かざるを得なかった畢生のノンフィクション作品だ。

 「いままでソヴェトの真相は憎悪の念をもって云われてきたか、でなければ愛情をもって虚偽が云われてきたのである」、「ソヴェトの現実が、その最初の理想にたいして食い違いを示してきたことは最早疑いをはさむ余地はない」。

 当時世界各国の知識人の多くは、台頭するファシズムを深く憂うあまり、革命直後の苦しみから計画経済に移行し、巡航速度に乗り始めたかに見えたソ連という国家を、丸ごと単純に買いかぶり、そこに人類の未来さえ見出そうとした。ジッドは共産党員ではなかったが、熱烈なシンパであることを隠さなかったから、『旅行記』がソ連同伴知識人に与えた衝撃は計り知れない。

 「今日ソヴェトで強要されているものは、服従の精神であり、順応主義である。したがって現在の情勢に満足の意を表さないものは、みなトロツキストと見なされるのである」。

 ソ連市民と自由な接触を許されていたジッドは、各地の人々とのやりとりを通じて異様さに気づく。例えば、共にスペイン戦争で反ファシズム陣営にいることを喜びたい、と講演しても誰も反応しない。スペインで何が起きているか、何も知らされていないし、プラウダが模範見解を示してくれない事象には、みんなが思考停止に陥ってしまう。順応主義は社会の隅々まで及んでいた。確かにスペインでソ連は共和国軍を支援したが、真の目的が、宿敵のアナキスト、トロキストのあぶり出しと、新兵器の性能試験だったとは、まだジッドも知らない。

 「ソヴェトでは、たとえどんなに見事な(芸術)作品であっても、もしも規準にあてはまっていないと、すぐ無視される」、「芸術家や作家たちに要求されていることは、順応せよという一言につきる」。芸術の窒息は、表現至上主義者のジッドには特に我慢ならなかった。個人崇拝の腐臭も嗅ぎつけた。

 ジッドが去った翌年にはソ連でスターリンによる禍々しい大粛清がはじまる。その真相は、フルシチョフが秘密演説で暴露する1950年代まで公式には国民にさえ隠された。外国の知識人たちはそんな生き地獄とは知らないで、ソ連を含めた戦後秩序をあれこれ能天気に論議していたことになる。
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