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青春小説に蘇る新聞人の気概…『北海タイムス物語』

Posted by Ikkey52 on 03.2017 ジャーナリズム   0 comments   0 trackback
 終身雇用が日本の企業社会の美徳のひとつとされていた時代も、中途入社やキャリア採用はあるにはあったが、あまり一般的ではなかった。新聞業界は例外で、地方の小さな新聞社での働きを買われて、より大きな新聞社に移籍して行くケースがいくらでもあった。例えば、大物政治家が次々と未公開株で甘い汁を吸い、大スキャンダルになったリクルート事件は朝日新聞のスクープだが、北海タイムスからの移籍組が取材の中心にいたことは業界で有名な逸話だ。

 平成10年に自己破産した北海タイムスは、日本の3大ブロック紙のひとつとされる北海道新聞(道新)に対抗した第二県紙だった。昭和30年代半ばに朝毎読など東京紙が相次いで北海道進出を果たしてからは、消耗戦で疲弊し、累積債務を増やしていった。経費切り詰めが常態化し、給与水準も昭和50年代にはすでに無残な線まで後退していたが、社員らは名門新聞社のプライドを一層高く掲げることで経営危機に耐えようとした。『北海タイムス物語』を書いた増田俊也は、大学中退後の2年間、実際に同社に在籍した体験を、劇画の原作を思わせるユーモラスで熱い青春小説に紡ぎなおした。

 司法試験をあきらめ記者志望に転じた東京の大学生、野々村巡洋は、20を超す全国の新聞社を受験して、北海タイムスのみに合格した。北海タイムスへの就職は大手紙再挑戦のための助走のつもり。長居は無用と割り切っている。短期間であっても社会部記者としてばりばり経験を積もうと決め込んでいたが、配属先は予想もしなかった整理部。見出しをつけ、フォントを決め、紙面をレイアウトする内勤で、会社から一歩も出られない。

 おまけに、ろくに企業研究もしていないので、給与の安さ、労働時間の長さを初めて知り愕然とする。しかも整理部は徒弟制度で、ついた師匠はミスター・タイムスの異名をとる寡黙な仕事師。腰かけ気分をたちまち見破られ、まともに口もきいてもらえない。挙句に、せっかく東京から遊びに来てくれた恋人、日菜子とは、出迎え先の新千歳空港でささいなことから喧嘩別れする始末。

 仕事もプライベートも全くうまくいかない中で、意に染まない新聞社対抗朝野球やケチな飲み会などに強引に連れまわされる。学生時代の貯金も底をつき、サラ金にも手を出した。社会部記者に配属された同期男女は溌剌として見え、何人かは瞬く間に同業他社から引き抜きの声がかかったと聞かされ、居ても立っても居られない…。

 自分が知る当時のタイムス記者の気質は真面目そのもの。夜討ち朝駆けにも手を抜かず、皆腕が立つので、警察など取材先から一目置かれていた。バブル以来の売り手市場といわれる今の就職戦線だが、少子高齢化の傾向に変化はない。新聞社の門を叩く若者のなかには、銀行やメーカーを併願する者が珍しくないという。先行きの不安から、よりよいサラリー、よりよい雇用条件が、職種選択より優先なのだろう。『北海タイムス物語』のなかにたくさん登場する「新聞人でいられるなら、どんな貧乏にも耐えてやる」といった気概の持ち主が、すでに絶滅危惧種になのはわかっている。わかっているのに、読みながら何度か不覚にも涙腺が緩んだ。いい読書になった。
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