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キング・オブ・シルクのホットな過去…『自由に生きていいんだよ』

Posted by Ikkey52 on 07.2017 書評・アジア情勢   0 comments   0 trackback
 いっときのファッションでなく、また、何かからの逃避でもなく、アグレッシブに人生を追求した結果、スローライフに帰着し、実践している人は眩しい。自分など、爛熟した資本主義社会にどっぷり浸かり、あくせく人生を送ってきた俗物だが、そんな人間であっても、本物のスローライフを生きる人の息吹に触れると、清々しい感覚を覚える。

 森本喜久男は本物だ。カンボジアの果てに手作業だけによるシルク工房をつくった。「工房」といっても、人口70人の村だ。うち子供が約30人いて学校もある。東京ドーム5個分の広さの敷地には、蚕を育む桑の森がある。戦乱続きでほぼ死滅しかけていたカンボジア・シルクの伝統を森本はここで蘇らせた。内外から村を視察にくる見学者が途切れない。2016年には2000人を超えた。ラルフ・ローレンや稲盛和夫も来た。

 こう書くと、何やらエコロジーに理解ある日本の国際派実業家が、ポケットマネーでつくったカンボジア復興事業の文化版実験室のように思えるかもしれない。しかし、村は紛れもなく、カンボジアの農民たちが牛10頭とニワトリ100羽を飼う暮らしの場だ。各国の観光地によくある歴史文化村の類いとは違う。いまや、染め物の手を動かしながら、おしゃべりに興じる母親たちのまわりで、子供たちが跳ね回り、男衆は夕餉の魚を求めて川に舟を浮かべる。老人も新参者もみな役割を楽しむ。驚くべきことに、村の基礎は森本が一人で荒れ野に鍬を下ろして築いた。森本とは何者か。

 来年古希を迎える森本は、弟子を何人も抱える京友禅の親方だった。「あくせく村」の住民からすれば、成功者に違いない。しかし、森本はその立ち位置に飽き足らなかった。大御所になって、伝統工芸士に任じられて…、それでいいのかと迷いに迷った。バンコクのスラムで奉仕する女性社会活動家との偶然の出会いからタイに渡り、シルク販売で成功しかけたが、それにも飽き足らない。

 中学のころ理不尽な2度の鑑別所送りを経験した。定時制高校時代にも間尺に合わない退学処分に遭った。新卒社員として旧電電公社に採用されたが、政治の季節に遭遇し、日韓、横須賀米原潜反対、三里塚、東大といった各闘争を労働者反戦の活動家として戦い、ついには自主退社を強制されもした。その間、食うために土方、左官屋、電気工、沖仲仕など、なんでもやった。若い日の労働体験から森本は、いつのまにか、流転することを恐れなくなり、同時に、ちんまりと収まりかえる人生を自分には似合わないものだと、思いなすようになった。言葉を換えると、全く守りに汲々としていない。

 インタビュー構成、『自由に生きていいんだよ』(聞き手・高世仁)で森本は、夕方からの5時間しか電気が通じない自分たちの住処を、「貧しい村」と呼ぶ一方で、「貧しい村はちっとも貧しくない」という。シルクづくりに関わる村人には給料が出るが、金がなくても食べて行けるので、給料を取りに来ない人もいる。フランスの思想家プルードンは「財産は盗みだ」と断じたが、森本は「所有に意味はない」と語る。現代の豊かさはカネとほぼ同義に響きがちだが、財産、所有という概念は、原初の人間社会にはなかったはずだ。それにしても「社会主義」とか「宗教」とか、特定イデオロギーを微塵も媒介しないで、能力に応じて働き、必要に応じて取るコミュニティを実現させているのは驚異だ。村を率いる森本は、コンビニと100円ショップが溢れる社会に批判的だが、「インターネットは素晴らしい」とも述べ、図書を漁り、世界情勢にも目を配る。文明を拒否するだけの田園の仙人でないところが味噌か。
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