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現職総理・大隈重信の中国観

Posted by Ikkey52 on 22.2017 近現代史   0 comments   0 trackback
 私事で恐縮だが、母方の祖母から生前、「先祖が大隈重信にお世話になった」と聞いていた。祖母の祖父にあたる人物は幕末の佐賀に生まれたが、親を早く亡くし、苦しい家計のなかで弟の学資と進学先に悩んでいたところ、藩校で机を並べた竹馬の友、大隈らの金銭支援と強い薦めを受け、福沢諭吉の私塾で学ばせたという。

 厳つい表情の大隈像に睥睨されながら、キャンパスを闊歩する軽佻浮薄な学生たちの群れに自分が混じったとき、祖母は「大隈さんに恩を返した」という感情を持ったらしい。それでも、大隈重信という人物の実像について、自分はどれほども知らないで来た。祥伝社版『大隈重信 中国人を大いに論ず』は、大隈が二度目の首相在任中に書き上げたものの現代語訳だ。底本はのちの西武グループ創始者、堤康次郎がまだ無名時代に手掛けた出版事業で世に出した『日支民族性論』。大隈は出版を大いに喜んだらしいが、一発当てようした堤の目論見は無残に外れ、利益は出なかった。

 一読してわかるのは、大隈という人の教養深さだ。武家の出だから漢籍に詳しいのは当然として、カントの哲学も語るし、ギリシャ、ローマから始まるヨーロッパ史もしっかり踏まえている。日本史の解釈も贔屓の引き倒しに終わらず客観的だ。大隈は山形有朋と同年者だが、明治日本の元勲といわれる政治家のなかで、これだけ広範な学識を兼ね備えた人物は多くないのではないか。それはおそらく、二度目の内閣を組織するまで、いったん政界から身を引いて、教育者としての顔を持ったことが大きかったのではないか。

 肝心の中国人論については、解説にあたった倉山満が「現代人が読めば、『ネトウヨ』と断じるに違いない中身」と予防線をあらかじめ張っているが、そんな必要はないと感じた。中国が中国という一つの国家として、世界最古の文明を引き継ぎながら、「目覚めた獅子」として今日に及んでいる、という解釈は、どう見ても怪しいからだ。例えば日中友好に尽力した鄧小平や胡耀邦と、反日教育を始めた江沢民、覇権主義丸出しの習近平は同じ国を支配する同じ党の指導者だが、地続き感はまるで薄い。この間、日本の外交政策の機軸はほとんど変わっていないのだから、なおのこと、中国側の政治的一貫性には疑問が残る。

 「支那の革命は王朝が交代するだけ。孔子の説く『礼』などは後代に行くほど形式的で装飾的。古代から周囲を野蛮とみなすが、実は何度も周辺民族に征服されてきた。『朝貢』と威張るが実態は貿易。宗教心を欠き、文は尊ぶが武を卑しむ。刑法はあるが民法がない」など、指摘は分かりやすく、今日の中国共産党政権にも当てはまるところが思い浮かぶ。

 ただ大隈は、中国を批判し貶めているだけではない。「このように論じると、日本と支那の両国民の間には心理的状況に大きな相違があるように思われるが、実際はそうではない。根本のところにおいて両者の性質は近く、のちの習慣によって遠くなったに過ぎない」。日本人のなかに「支那を取ってしまえ」と言う者がいるが、これこそ「誤りも甚だしい」。「あの大国は、けっして他国によって征服されることはない」。「ヨーロッパ全体の規模に近い大民族を、一国の力で統御しようなどというのは、まったくもって空想に他ならない」。つまり、日本が示すべき態度は「あくまで平和主義である」。自ら興した早稲田の学舎に多くの中国人留学生を受け入れていたのは、いうまでもない。

 本書執筆時は、日英同盟の関係で第一次大戦に形ばかり参戦し、遼東半島のドイツ権益を得た時期だった。スターリンなら一国丸ごと掠め取るような火事場泥棒をしていただろう。とかく評判の悪い対華二十一か条はそのドイツ権益の肩代わりを中国側の内々の意見も入れた上で求めたものに過ぎず、あの民本主義の吉野作造にして「最小限の要求」と見るようなものだったが、国際的な反日キャンペーンに利用された。その交渉責任者だったことが、宰相としての大隈の評価を今日まで曇らせてきた面は否定できない。

 大隈が慶応義塾大で行った講演の中身が付録のように加えられている。明治新政府で大隈のステップボードは大久保利通の引き立てだったが、若き日の大隈は、福沢諭吉を隣藩出身の大局観に優れた天才として仰ぎ見ていた。一時不仲の時代があったが、その畏敬の念は総理になっても変わらず、最後は「諭吉翁の心を心とせよ」と慶大生たちに語りかけている。
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