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辣腕黒服が見たバブル期ススキノの光と影…『夜明け遠き街よ』

Posted by Ikkey52 on 30.2016 文芸批評   0 comments   0 trackback
 テレビ局のアーカイブ棚に残っている素材を使って、日本のバブル期を描けといわれたら、たいていのディレクターは、東京・芝浦の巨大ディスコ(今でいうクラブ)、「ジュリアナ東京」の通称お立ち台と呼ばれた特設ステージのうえで、大きな羽根つき扇子を振りながら体をくねらすワンレン・ボディコンの若い女性たちの映像を引っ張り出すのではないか。月並みだが、バブルという特殊な経済期の雰囲気を描き出すのは案外難しい。

 土地が上がり、株価もどんどん上がる。銀行は集めたカネの貸し先に困り、好景気に乗り遅れまいとする顧客の心理を見透かし、担保らしい担保も取らずに巨額融資を持ちかける。利益予想が上振れした会社は、税金に取られるくらいなら、と社員のボーナスを気前よくはずんだ。消費は美徳とされ、女たちはハイブランドの服を買い漁り、男たちは歯止めがなくなった勤め先の接待費を懐に、夜な夜な豪遊を繰り返した。タクシー運転手は短距離客を客とは思わなくなった。

 高城高(こうじょう・こう)の小説『夜明け遠き街よ』は、そうしたバブル期の光と影を、札幌の繁華街・薄野に生きるマンモス・キャバレーの敏腕黒服、黒頭悠介(くろず・ゆうすけ)の体験を通じて描く。黒服といっても店内での客とのやり取りで読ませるわけではない。

 優秀な黒服は、店にとって優秀なスカウトマンなのだ。街角で見ず知らずの子に声をかけるようなことはしない。高級クラブなど他店のママ、同業者の支配人、黒服仲間との間に細かい人脈を張り巡らせて、客あしらいの上手い凄腕女性やがっちり固定客を持つ稼ぎ手レディの、移籍を言いだすタイミングを見計らい、スマートに誘い水を向ける。

 自らスカウトしたホステスには、日常の愚痴も聞くし、人生相談の相手にもなる。借金で困っていれば解決のために奔走してやる。まだ若い黒頭が副支配人を任されているのは、そんな面倒見の良さを社長に買われているからだ。紅灯の巷には付き物の危ない局面にも出くわすが、生来の頭の回転の速さと、薄野地区で生まれ育った者たちのネットワーク、客筋の協力者、そしてかつてボクシングで鍛え、今でも手入れを怠らない細見の体を目いっぱいに動かして、なんとか切り抜けてゆく。

 自分の記憶の中にあるバブル期の薄野には、華やかなネオンサインが眩しい表通りと隣接して、古い商店と木賃アパートの街が広がっていた。そんな一画から火事が出るたびに、地上げ放火の黒い噂がつきまとった。フィリピン・パブが出始めたのもそのころだ。 主人公の黒頭は独身の優男だが、酒もやらないし女遊びもしない。出勤前の楽しみといえば、豊平川沿いの遊歩道で朝のロードワークをこなした後、パリッとしたスーツに着替えて元商社マン夫婦が営む馴染みの喫茶店に立ち寄り、新聞をチェックしながらコーヒーを啜ること。だから、色と慾の渦に黒頭が首をつっこんでも、話が汚くならない。派手な立ち回りもほとんどない。

 高城高は、夜の世界に生きる男女をバブルに踊らされた当事者というより、バブル紳士の浮かれぶりを醒めた眼で眺める傍観者に仕立てて、そこに渋いハードボイルドのストーリーをうまく組み込んだ。彼らに対する高城のシンパシーが滲んでいるし、記者出身のこの人らしく、ディテールも相変わらず冴えていた。
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