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『暗号名ナイトヘロン』…超監視社会・中国を逃げる

Posted by Ikkey52 on 25.2016 エスピオナージ・書評   0 comments   0 trackback
 辣腕刑事が駆け巡り、名探偵の推理が冴えるという「追いつめ型」のサスペンスも悪くないが、スパイ小説にはやはり「逃げ回り型」が良く似合う。なんの予備知識もなく、本屋の店先で自分の背取り感覚だけを信じて手に取ったアダム・ブルックス『暗号名ナイトヘロン』。それがどうだろう、極上の仕上がりだ。

 中国政府が民主化を求める多数の若いデモ参加者を無慈悲に弾圧した1989年の天安門事件。それに連座し、辺境のチベットに近い労働矯正所に20年間も食らい込んでいた男、ファションが脱走に成功する。中国国内には約1000カ所の労働矯正所がおかれ、4~600万の人々が奴隷のような肉体労働を強いられているという。ファションはインテリ家庭に育ったものの、子供のころ父親を文化大革命の餌食にされ失っていた。長じて彼は科学者の道を歩み始めるが、父親を死に追いやった国への復讐心は消えるどころか、日に日に大きくなり、イギリス情報部と繋がって末端の情報提供者(スパイ)となっていた。ただし、民主化要求デモに出たのは純粋に中国人としての思いをぶつけるためだった。

 一方、フリーランスのジャーナリストで北京に駐在する英国人のフィリップ・マンガンは、相棒の豪州人カメラマンと組んで、食べるためには仕事を選ばない。とはいえ、権力監視という記者の原点を忘れるような男でもない。中国当局が世界の目からひた隠しにする国内宗教団体(法輪功がモデル)への苛酷な弾圧を継続取材しているため、当局のマークは厳しさを増し、危ない橋を渡ることも多い。

 北京に出たファションは最下層労働者相手の売春宿に用心棒として住み込む。過酷な労働で鍛えられた彼の肉体は石のように頑丈で腕っぷしも強い。それでもファションは中国国内ではそう長くは逃げ延びられないと知っている。監視カメラがあらゆる角度から市民生活を監視し、電話、メールも内容が当局に筒抜けだ。ファションは、かつての情報提供者仲間でいまは中国の軍事機密に関わる機関で高位な研究職につく男を見つけ出し、中国のロケット開発に関わる重大情報を脅し取る。それを手土産にイギリス情報部との繋がりを回復し、パスポートと安全な逃亡先と十分な生活資金を得ようと、イギリス大使館周辺をうろつくが、たまたま出会ったのはジャーナリストのマンガンだった…。

 トータルなストーリー展開としては、英国スパイ小説の伝統を踏まえ、ロンドン・ヴォクソールにある SIS本部ビルの非情ぶりの描写は忘れていないが、昨今流行りの民間軍事諜報企業の暗躍あり、姿を見せない天才ハッカーありで、今日的な洗練度は高い。後半は天津から台湾対岸の福州まで陸路を使った大逃亡劇が用意され、ドキドキ感に加速度をつけるサービス精神も心憎い。これが第一作というのだから、アダム・ブルックスという中国語が堪能なジャーナリスト出身作家の筆力は末恐ろしい。

 ただし、英語名の場合はファーストネーム、その短縮版、ファミリーネームの混在が避けられず、そのうえ状況によって1人の人間に対し、実名、組織名、暗号名が用いられることもある。オリジナル本がそうなのだから、文句は言えないが、煩わしくなかったといえば嘘になる。
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