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ル・カレが見つけた新しい「敵」は?…『繊細な真実』

Posted by Ikkey52 on 03.2016 エスピオナージ・書評   0 comments   0 trackback
 訳者あとがきの中で加賀山卓朗は、「リーダビリティ」という耳慣れない言葉を使い、80歳をとうに越す老作家の飽くなき進化に驚きを呈した。あのル・カレの筆が、新作のたびに読みやすさの追求に向かっている、というのだ。ル・カレといえば、スパイ小説史のレジェンドであって、作風は重厚そのもの。御世辞にも読みやすくはなかったのだが、『繊細な真実』という作品、たしかに過去作とはとは一味違う。

 …取り立てて功績はないものの堅実に働き、イギリス外務省を無事に卒業する日もそう遠くないベテラン職員はある日、唐突に一面識もない閣外相クインから呼び出される。そこで、スペインからモロッコに向けて地中海へ鋭利に突き出した岬の先端、英領ジブラルタルに自分の代理として4日間出張するよう命じられ、「ポール」という偽名を与えられた。極秘の軍事作戦などに関わったことのない「ポール」は大いにうろたえたが、若く野心的なニュー・レイバー(英国労働党右派)らしく、あくまで威圧的なクインには抗えない。ともあれ現地での恐怖体験に耐え、「ポール」が無事帰国すると、「作戦は上々の成果を挙げた」と讃えられ、守秘義務は課されたものの、直ちに特殊任務から解放された。 
 「上々の成果」がどんな業績評価に結び付いたのか、「ポール」には全くわからないが、その後は外交官人生の最後を飾るにふさわしい夢のようなカリブ海の島国に赴任し、のみならず現地トップに見合う爵位まで手に入れて3年間を送り、いまや悠々自適の身。イギリスでも気候温暖な妻の郷里の田舎に引っこみ、積極的に村人たちに溶け込む努力をした結果、経済的にはもとより、社会的にも不満のないリタイア・ライフを送っている。

 一方、閣外相クインの秘書官に抜擢され前途洋々たる外務省職員トビーは、クインの秘密主義とナゾの単独行動にいつも振り回されている。やがて、クインが怪しげなアメリカの民間防衛企業と繋がっていると感じたトビーは、自分の身を守るためにも証拠を握りたいと考え、クインが外務省内の目を欺いて胡散臭い連中を大臣室に招き入れ密議をこらす様子を、古すぎて誰もその存在を知らない大臣室備え付けのテープレコーダーで密かに録音した…。 
 それから3年。トビーは危険に満ちたベイルート駐在勤務を終え、新しい任務を与えられてロンドンに戻るが、帰任した当日、彼のフラットに見ず知らずの人物キッドから封書が届く。「貴殿とはポールという名の共通の知り合いがいる」と、キッドはヒントを提示してきた。読むうちトビーには自分の正しさが証明されたような思いが湧いた。3年前、あの大臣室の密議に加わっていた人物の一人は確かに「ポール」と呼ばれていた。手紙では詳しく書けない何か重大な秘密を、キッドと名乗る差出人は自分に直接会って打ち明けたがっている…。誰かからのこうした接触をずっと心待ちしていたことにあらためて気づいたトビーは、迷わずキッドの誘いに応じ、人里離れた北コーンウェルまで出かけていって、ついにジブラルタルでの軍事作戦の真相を知るが…。 

 冷戦終結で死滅するとされていたスパイ小説は、どっこい生き残った。例えばアラブのテロリストやアフリカの独裁者を敵に見立てて。ところが大御所ル・カレが見つけた鉱脈は国家さえ跪かせるグローバリズムであり、また忠誠を尽くすべき自国の政府の思いも寄らない硬直化だった。ル・カレの小説はずっと諜報機関を扱ってきたが、自国万歳のおめでたさとは無縁だった。初期の諸著作は特に、主人公が所属する組織の歪さや官僚主義を、表向きの敵であるKGBよりかえって度し難いものとして描き、それが読み手をうならせてきた。とはいえ、たしかにグローバリズムはやっかいだが、英国ニュー・レイバーとアメリカ共和党福音派は果たして「敵」なのか。どうも合点がいかなかった。もっともそれは小説の読み方というより、国際情勢の読解力の問題かもしれないが…。

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