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必然性を軽んじたばかりに…映画『われらが背きし者』

Posted by Ikkey52 on 08.2016 映画   0 comments   0 trackback
 ロシアン・マフィアの残忍さを導入部で描いて、「ツカみ」としては十分な効果を上げていた映画『われらが背きし者』。ただし、背景がどことなくロシアっぽくない。北欧くさいなと思ったら、案の定シーンのロケ地はフィンランドだった。金満マフィアの棲む現代ロシアの舞台背景は、すでに無国籍化してしまい描きにくく、活動屋泣かせだ。

 ジョン・ル・カレの小説を原作にしていて、タイトルまでそのまま。しかし『われらが背きし者』では、いかにも地味で(明日には忘れそう)、PRはさぞかし厳しかろう。内容は、いわゆる「素人巻き込まれ型」のサスペンス。腕利きどものスパイ合戦を期待すると馬鹿を見る。

 ロンドンの大学で詩学を講じる若い貧乏学者のペリー(ユアン・マクレガー)は、法廷弁護士として稼ぎのいい黒人妻ゲイル(ナオミ・ハリス)との仲がぎくしゃくしている。関係修復を兼ねて2人はモロッコを旅するが、ことはうまく運ばず時間が過ぎる。仕事の電話に忙しいゲイルはレストランでの夕食の席を中座したまま戻らず、ひとり取り残されたペリーは、居合わせた恰幅のいい男ディマに空虚な胸の内を見透かされ、ディマがロシアン・マフィアの大物とも知らず、誘われるまま彼らのパーティに出て、豪勢でエロチックな一夜をすごす。

 翌朝もペリーは、押しの強いディマのテニスの誘いに乗り、夫婦にとってモロッコ最後の夜だというのに、ディマの娘の誕生バーティにまで呼ばれて、妻のゲイルを苛立たせる。帰国を前にしてペリーは、ディマから組織のマネーロンダリング情報の入ったUSBを強引に渡される。ロンドンの空港でMI6(イギリス秘密情報部)に渡して欲しい。自分と家族の命がかかっているから、とディマに懇請され戸惑うペリー。結局頼みを聞いてしまう…。 

 小説にしろ映画にしろ、エスピオナージ・サスペンスの生命線は、微細な一点さえおろそかにしないリアリティだろう。しかし、この映画の演出には必然性を疑わせる明らかな瑕疵がある。例えば、ディマにとってペリーは、実直で誠意もある男に見えたとはいえ、アフリカの観光地で偶然に出会ったにすぎない人物に、果たして一家の命と等価であるUSBを託すか。逆にペリーにとってディマは、虚しい旅先で束の間の気晴らしをくれた裕福な男だったとしても、スパイもどきの活動の片棒をあえて担いでやるほど恩義を感じる相手だったのか…。

 『われらが背きし者』が全体として重厚さを欠くのは、そこを丁寧に描くべきなのに、描けていないからだ。あとはお定まりの逃亡劇、チープな立ち回り、ヘリコプター爆破、官僚の裏切りなどなど、ダメなB級映画の坂道を転げ落ちてゆくだけだ。ル・カレは自らもかつて一員だったMI6を描くとき、妙な肩入れは絶対にしないのだが、それにしてもダミアン・ルイス演じるMI6管理官のヘクターは影が薄いし、役柄に似合いもしない。ルイスといえば、人気テレビドラマ『HOMELAND』シリーズ初期のキーマン、ブロディを演じてブレイクした人だが、伊達メガネをかけてもブロディの残像が消えない。俳優にとって当たり役とは後続の仕事を邪魔する両刃の剣なのかもしれない。
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