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若者御法度の青春小説…藤田宜永『夢で逢いましょう』

Posted by Ikkey52 on 04.2016 文芸批評   0 comments   0 trackback
 久々、日本人作家による小説を堪能した。藤田宜永の『夢で逢いましょう』を読んで発見したのは、団塊の世代と呼ばれている人々、特に町場で少年少女期を過ごした者にとって、草創期のテレビが持っていた影響力の絶大さだ。

 テレビCMが売り込む魅力的な新商品が、カネさえ出せば近くの商店で難なく買えてしまうマスプロ環境は、子供たちとテレビの関係をグンと密にした。それにしてもバヤリースのジュースが出てきたのには笑ってしまった。小学生の自分に舶来信仰があったとは思えないが、たまにありついたバヤリースはリボンジュースとは別物で、外国の味がした。

 自分は、藤田が描く団塊の世代よりいくつか歳下だが、まったく違和感なく作品に入れたのは、テレビからの情報摂取体験が作中人物とシンクロしていたからだ。自分と同年の人間と話すと、『月光仮面』、『隠密剣士』、『快傑ハリマオ』など子供向け番組を懐かしむ者はいても、作中の団塊世代のように、『お笑い三人組』、『ララミー牧場』、『サンセット77』、『夢であいましょう』、『事件記者』を語る者は多くない。もちろん、前者は自分世代のヒーローには違いなかったが、今の自分にも繋がると思える番組群はむしろ後者だ。テレビが家庭にやってくるのが多少早く、宵っ張りが多少許されると、兄姉がいなくとも、ませたガキを生むのだろうか。

 60の声を聴き数十年ぶりに再会した幼馴染三人組。主役は、大過なく地道にやって定年を迎えたものの満たされない思いを募らす元コンドーム製造会社社員の日浦昌二。独り身をいいことに孫ほどの歳のキャバ嬢と逢瀬を楽しむ探偵事務所主宰者の及川三郎は準主役級か。社内の権力闘争に勝ち抜いて、大手食品メーカー常務の座を射止めた滝沢誠一郎は、妻に離婚を求められ虚脱状態に陥る。さしずめ脇役ではあるが、大団円に向けて欠かせない存在だ。

 育った家庭の事情などから東京・白金S町を離れ、ばらばらになった3人は、学園闘争の嵐が吹き荒れる日々を大学生として共に東京で過していた偶然に気づくはずもないし、卒業後の人生行路もまた、五巡り目の年男になるまで交わらない。不思議な導きの糸は、探偵の及川に舞い込んだ、「かつて親に飼われていたオウムの行方捜し」という一風変わった依頼であり、それをきっかけに3人は再び縁(えにし)を繋ぐ。

 「10年以上恋愛小説を書いてきた作者が、その経験を生かしながら原点であるミステリーに回帰した作品」(新保博久)という位置づけだが、文庫版で600頁を優に超える長編ながら一気に読ませる。3人の小学生が白金S町で過ごした昭和30年代のノスタルジーだけではない。社会人となって以来、あえて振り返ることもしなかった甘酸っぱい学生時代の愛と性のエピソードが、羞恥や矜恃といった過剰な自意識に邪魔されず、自然体で思い出される。還暦とは、そうした脱力した精神状態の謂いなのかもしれない。
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