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透徹無比の歴史観…船戸与一『満州国演義Ⅰ~Ⅸ』

Posted by Ikkey52 on 30.2016 文芸批評   3 comments   0 trackback
 知人に勧められて船戸与一の『満州国演義』を手に取ったのは去年のこと。タイミングのいい文庫版の出版開始に背中を押されたのだが、全9巻は1巻ずつ1年越しの不定期刊。次の新刊が出るまで待ち遠しかった。中毒性は思いのほか強い。それもそのはず、全体として満州国の建国から消滅までを、様々な形で関わった人々の体験から語るという体裁を取りながら、真に語られているのは、維新以来の日本の歴史であり、破滅的敗戦に至る日本と世界の因果関係史なのだから。巨視的視座という意味でも、ちょっと比すべき小説が思い浮かばない。

 週刊誌連載時代から数えて全巻を描き終えるまで10年。参考資料430冊を渉猟した、400字詰め原稿用紙7500枚にも及ぶとんでもない大作ゆえに、この作品に限って研究し、薀蓄を傾けるブログまで存在する。ずばりその名も「満州国演義を読む」。ブログ氏は読後分析の全体をまとめるのに600時間を費やしたそうだ。これもまた労作といわずに何といおう。
http://manshuengi.seesaa.net/archives/201602-1.html

 「満州国演義を読む」のブログ氏は、船戸ファンのベテランを任ずる読み手だが、自分は初心者だ。『砂のクロニクル』などまるでフランツ・ファノンの義兄弟のような初期作品には触れていたが、そのワイルドさにすっかり毛脅され、それきりになっていた。きわめつけの無頼系冒険小説家と勝手に決めつけてきた船戸が、日本の近現代史という魔物を前にここまで真摯で学究的だったとは…。わが不明を恥じるばかりだ。

 とはいえ、『満州国演義』は歴史書ではなく、あくまで小説として綴られた。どうやって「小説」たらしめるか、作家は考え抜き、狂言回しとなる敷島四兄弟を造形したはずだ。東京帝大出の外務官僚・太郎、満洲馬賊を率いた次郎、陸士出の花形軍人・三郎、そして無政府主義系の劇団員だった早大生・四郎が、人生の軌跡を日本、満州、支那、東南アジアにてんでに広げ、広げた先が歴史的重大事件の現場と次々に重なる。それだけなら満州は世界と繋がって見えないが、神出鬼没の男2人、即ち陸軍特務の佐官・間垣重蔵と同盟通信の移動特派員・香月信彦が、四兄弟をつなぐ糸として頻繁に登場し、知る人ぞ知る国際情勢や軍事機密、果ては最高戦争指導会議の暗闘など機微に触れる情報をもたらすことによって、四兄弟の踏みしめる場所と日付が立体的に見える。巧みな仕掛けだ。

 ありきたりの歴史書では枝葉末節扱いされる東条英機暗殺計画や通化事件、ソ連第7006俘虜収容所(モンゴル・ウランバートル)の存在などを描き落とさなかった。美化されがちな「特攻」の醜悪な真相を、実際のエピソードを基に暴き出した。いずれも作家の確かな歴史観を物語る。明治と昭和の間に大きな断絶を見ようとする司馬遼太郎の日本史観に、船戸は真っ向から異議を唱えたのではないか、と読むのは 「満州国演義を読む」のブログ氏だ。http://manshuengi.seesaa.net/article/438802275.html
 確かに船戸は長編の最終盤、香月信彦の口を借り、『幽閉記』に著わされた吉田松陰の思想を持ち出す。黒船の来航で一挙に顕在化した日本の民族主義(=松陰の尊王攘夷論)は、欧米の植民地にされないために、アジアを植民地化するしかない、との考えに至る。幕末の激動から続くそうした思考は、明治を経て昭和20年8月まで、変わることなく日本をリードしていたのではないか。そして、その大きな代償があの破滅的戦争だったのではないか、と問う。この見方は、文庫版第9巻(最終巻)解説の大任を引き受けた自称狂書家、井家上隆幸の指摘通り、けして自虐史観ではないし、大いに合点がいく。

 第8巻を描き終えた時点で、船戸はあるインタビューに以下のように答えている。
 「当時に似ているのは、日本というよりも、むしろ今の中国であるように感じる。<中略>軍部に対する習近平の影響力が弱ければ、そこから分裂が始まる。軍は新陳代謝したがるものだ。つまり、人員整理と兵器の近代化。それに一番効果的なのは戦争だから、軍が東シナ海や南シナ海に出たくなるのは当然だ。<中略>この状況は、満州事変前夜の大日本帝国にそっくりだと思う」。http://www.shincho-live.jp/ebook/nami/2014/01/201401_06.php
 もはや、明察というしか言葉がない。
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突然のコメント、失礼します。

実は私の所属しています劇団ピープルシアターでは、生前の船戸先生からお許しをいただき、船戸作品を舞台化しています。

今まで、砂のクロニクル・新宿、夏の死・蝦夷地別件と上演してきました。

この度、10月には満州国演義を上演します。ご興味がございましたら、ぜひ観にいらして下さい。

ピープルシアター
http://peopletheater.moo.jp/
2017.07.04 16:29 | URL | 伊東知香 #- [edit]
素晴らしいニュース お知らせいただきありがとうございます。ぜひ拝見したいと思います。





> 突然のコメント、失礼します。
>
> 実は私の所属しています劇団ピープルシアターでは、生前の船戸先生からお許しをいただき、船戸作品を舞台化しています。
>
> 今まで、砂のクロニクル・新宿、夏の死・蝦夷地別件と上演してきました。
>
> この度、10月には満州国演義を上演します。ご興味がございましたら、ぜひ観にいらして下さい。
>
> ピープルシアター
> http://peopletheater.moo.jp/
2017.07.08 15:05 | URL | Ikkey52 #- [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017.10.10 12:33 | | # [edit]


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