Loading…

スポンサーサイト

Posted by Ikkey52 on --.-- スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

進化する「ダメなスパイの群像劇」…ミック・ヘロン著『死んだライオン』

Posted by Ikkey52 on 21.2016 エスピオナージ・書評   0 comments   0 trackback
 スパイ小説の醍醐味は、提示された事件や陰謀のリアリティそれ自体ではなく、むしろ登場人物と彼(彼女)の置かれた環境にあるのではないか…。通読してそんな気にさせられた。ミック・ヘロン著『窓際のスパイ』の続編、『死んだライオン』を真夏の寝苦しい夜に堪能した。

 冷戦期にイギリス情報部員だったディッキー・ボウは、年金ももらえずに組織をお払い箱になり、今はソーホーにあるアダルトショップの店員に身をやつしている。ボウがスパイ失格の烙印を押されたのは20年前、駐在先のベルリンでソ連側スパイに一時的に拉致されたといって酔いどれで生還し、それを身内に疑われたからだが、ロンドン市内で偶然、忘れもしない拉致犯の男を見かけ、ディッキー・ボウは迷わず後を追った。尾行はお手のものだ。ところがウースター行き列車のトラブルで急遽仕立てられた代行バスからボウは二度と降りてこなかった。心臓麻痺と片づけられたが、ボウに追われた男もスパイのはずだ。ボウがこときれた座席の下から<蝉>というダイイングメッセージらしきものを示す携帯電話を見つけたのは、英国保安局(MI-5)の追い出し部屋、通称「泥沼の家」の横着な絶対君主、ジャクソン・ラムだった…。

 例によって、英国保安局(MI-5)でヘマをやらかした結果、郊外の黴臭いおんぼろビルに押し込められ、暇つぶしの仕事しか与えられないダメ局員(蔑称:遅い馬)たちの物語。自己嫌悪とたたかいながら、誰も「泥沼の家」を辞めようとしないのは、何とかして汚名をそそぎ、かつてのプライドを取り戻したいと願っているからだ。冷戦時代の古強者であるラムはおよそ向上心とは無縁のだらしのない中年だが、ただ者ではない。保安局ナンバーツーのダイアナ・タヴァナーの弱みを握って、本局に媚を売らないし、「泥沼の家」の暴君の座を楽しんでいるようでいて、誰に命じられるわけでもないのに、突然隠密行動に走り出す。

 スパイらしい仕事、再起を図るチャンスらしいチャンスに飢えている遅い馬たちは、ラムの不意の目覚めを見逃しはしない。もちろん、遅い馬たちを小馬鹿にするラムは、何等かの役割を欲しがる部下の熱意にやすやすとほだされるほど、物分りのいい上司ではない。それでも遅い馬たちはあの手この手でラムのガードを下げさせ、それぞれミッションを掴んでゆく。

 今回も、第一作同様、重い任務をあてがわれた遅い馬はリヴァー・カートライト。伝説のスパイ・マスターを祖父に持つ毛並みのいいリヴァーは、かつて昇進実地試験に絡み、ロンドンの地下鉄を大混乱に陥れたかどで「泥沼の家」入りした。今回は長期取材にやってきた若い作家を装って、ボウが追った男の逃げ込み先の退屈な田舎町、アップショットに潜入する。そこは果たして、<蝉>、すなわちスリーパーを疑われる人間だらけだった。

 最近、アメリカ映画のCIA、FBIものに登場するチームには、パソコンで何でも調べられる天才が必ずと言っていいほど重要な脇役として登場するが、遅い馬のメンバーには偏屈な若者、ローデリック・ホーがいる。とはいえ、過去を辿るにはやはり「記憶の神」が必要だ。ジョン・ル・カレのスマイリー三部作では、スマイリーのかつての同僚で、旧ソ連のスパイの生き字引だった太った初老の女性、コニー・サックスが印象的だった。『死んだライオン』には、ラムの旧友でいまは本局地下の<書架>で夜勤を務める車椅子のおばさん、モーリー・ドーランが出てくる。雰囲気はまるでコニーだ。たぶん、オマージュなのだろうと睨んでいる。
スポンサーサイト


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://ikkey52.blog27.fc2.com/tb.php/339-f39dc959

プロフィール

Ikkey52

Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

ショッピング

トラベル

オークション

最新トラックバック

ラビリンス

デラシネ通信

ブログランキング

ブログランキング

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。