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完結編ならではの同窓会…『スマイリーと仲間たち』

Posted by Ikkey52 on 20.2016 エスピオナージ・書評   0 comments   0 trackback
 ジョン・ル・カレの小説を読むたびに、スリラーやサスペンスの一分野に分類されてきたスパイ小説のなかにも、その純文学版があったことにあらためて気づかされる。登場人物の、しつこいほどの内省に付き合えない読者はあらかじめ拒まれるし、過去を通して今を読めない者も、結局は振り落とされてゆく。自分にはル・カレの良き読者だと言い切る自信などまるでないが、スマイリー三部作の完結編となった『スマイリーと仲間たち』の率直な読後の興奮だけは書き留めておきたい。

 小説が発表されたのは1980年だが、ストーリーの時代背景は明示されない。冷戦がつづくなか、スマイリー退職後のサーカス(英国情報機関)は、予算削減の嵐が吹き荒れ、スパイごっこはカズンズ(米国情報機関)にまかせておけ、といった空気に支配されていた。三部作の初作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』でスマイリーは、サーカスの幹部のひとりビル・ヘイドンが長年にわたりソ連のもぐら(二重スパイ)だったことを暴いたが、同時に奔放な妻アンとヘイドンの不倫を知ることになり、それらがソ連のスパイ・マスターでスマイリーの永遠のライバルでもある暗号名カーラの工作だと信じるに及んで、スマイリーは、気まぐれにうずき出す心を制御できないまま、たった1人のわびしい退職生活を送っていた。

 古巣のサーカスからの電話で夜中にたたき起こされたスマイリーは、通称「将軍」と呼ばれていた亡命エストニア人の情報提供者ウラジーミルが、射殺体で発見された現場に駆けつける。殺された老人は、モスクワ・センター(ソ連情報機関)に関する情報収集力に優れたインフォーマーで、かつてスマイリー自身が担当官だった関係から、事件にモスクワの関与が疑われる以上、捨ておくわけにはいかない。しかも、スマイリーなきあとのサーカスは老将軍ウラジーミルを用済みの人物視し、老将軍の組織の実態を知る者も引退したスマイリーをおいていなかった。

 ウラジーミルとサーカスの関係を知られないように事件を処理してほしいというサーカス現職幹部の虫のいい頼みを、スマイリーは不承不承聞き届ける。やがてスマイリーは、老将軍ウラジーミルが、モスクワ・センターの連中につきまとわれるパリ在住の亡命ロシア人女性オストラコーワから助けを渇望されていたことや、モスクワ・センター関係者を脅迫する決定的証拠を入手しようと組織の人間をドイツで動かしていたことなどを知る。

 サーカスでソ連情報の生き字引だったコニーも体の不自由な退職者として再登場し、スマイリーに貴重な情報をもたらすし、やはりサーカスを退職しロンドンで画廊を経営しているトビーは、ハイライトとなるスイスでのソ連大使館員拉致作戦で、いきいきとスマイリーの右腕役を果たす。三部作の初期には若造の印象だったギラムだけは当然まだ現役で、パリに駐在しているが、スマイリーの頼みを受け、オストラコーワの身柄保護を確実にやってのける。あえて書き込まれてはいないが、みんな現場が大好きなのだ。まさに、スマイリーのかつての仲間たち大集合といったところで、本の重厚な文体に比して、いかにも軽みのあるタイトルがなぜつけられたのか、ここまで読んでようやく合点がゆく。

 ラストシーンで、『寒い国から帰ったスパイ』を思い出さないル・カレ愛読者はおそらくいないだろう。明示されているわけではないが、場所はチェックポイント・チャーリーに違いない。ベルリンの壁が聳え、イスラム系住民の街になっているところでスマイリーたちは、寒い国からあぶりだされてくるカーラを待ち受ける。いやでも、あの名作がダブってくる。そしてスマイリーは、といえば、例によって予定時刻の2時間前から、取り立てて興奮に駆られることもなく待機しているのだ。すでに囚人の従順を身に付けたカーラを見て、涙を流したのはスマイリーではなくトビーだった、という結末は、同窓会という祭りの終わりを暗示しているようで、やはり胸に迫った。
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