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自然体で走る地方紙記者の群像劇…映画『スポットライト』

Posted by Ikkey52 on 22.2016 映画   0 comments   0 trackback
 米映画『スポットライト』は、脚本がまず高く評価されているようで、資料によれば、2015年のハリウッド映画祭、2016年の全米脚本家組合賞、英米両国のアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、インデペンデント・スピリッツ賞などの各脚本部門の賞を総なめにしている。しかし、作風は驚くほど地味だ。時空を飛び越えるような構成上の技巧とも縁がない。地方紙という斜陽産業に在籍し、花形とはいえない独自ネタ発掘チームにありながら、社内人事などわれ関せずで、時間を忘れ仕事に没頭する記者たちの姿が坦々と描かれる。葛藤や懊悩も最小限。それでも作品が魅力的に見えるのは、記者たちが私生活で覗かせる多少のボロも含めて、等身大の姿で細密画のように描かれ、そこにいささかの誇張もないからではないか。

 「スポットライト」とは、日刊紙『ボストン・グローブ』の調査報道班(キャップ1、記者3)が担当する記事スペースの通しタイトル。少数といえども調査報道に専門チームを割くこと自体、同紙の骨っぽさの表れだが、白紙から独自取材で長期連載に耐えるテーマを掘り起して行くのは簡単ではない。そんなとき、遠隔地の他社から物静かなバロンが新任編集長に迎えられる。彼は新天地ボストンを知るべく、同紙の過去記事を読み込むうち、あるカトリック神父による児童虐待疑惑に行き着き、「スポットライト」班キャップのロビーに、追いかけ直してみないか、と提案する。バロンはユダヤ人でキリスト教に関して特別な感情を抱いていなかった。

 チームが過去の報道をなぞってみると、すぐに手ごたえがあった。しかし、アメリカ最古の街ボストンの市民社会にキリスト教会は深く根を下ろしており、警察や司法でさえ教会の不祥事には目をつぶる空気が古くからあった。『ボストン・グローブ』の読者の半数以上もカトリックだ。再取材を本格化させる前に、社長にあらかじめ承諾を得るあたり、ロビーは老練だ。チームはやがて、様々な神父によって児童虐待が広く行われていた事実を掴み、事の重大性にあらためて気づくが、大人になっても心の傷が癒えないかつての被害者たちの口は重い。

 そもそも犯罪行為があったのに、これまでなぜ多くは事件化されず訴訟もうやむやにされたのか。枢機卿率いる教会上層部が、犯人と目される神父たちを病気療養などの理由で休職扱いし、ほとぼりがさめるのを待って別の司教区に転任させるなどして、意図的な隠蔽を図っていたに違いない。とすれば、教会の組織自体を撃たないと、報道はあだ花に終わる…。出会って間もないバロンとロビーだが、そこには共通認識が出来ていた。

 ボストンの名は誰でも知っているが、調べてみると人口は60万人弱と意外に少ない。地元で生まれ地元で働く人同士の人間関係はかなり濃そうだ。映画では新聞社の向かいにロビーの出身高があって、その同窓生たちが大きな情報源となる。一方、ユダヤ人であるバロンやアルメニア人だと打ち明けた弁護士のギャラベディアンら移住者の視点を通じて、ボストンのネイティブたちを覆う内向きの空気が、事件隠蔽のひとつの根になっていると暗示される。

 映画は事実に基づいており、一連のスクープで2003年にピュリッツアー賞公益報道部門賞をものにした『ボストン・グローブ』は、ロケに社屋を提供している。彼らの職場には気の利いた社員食堂のひとつもないけれど、居心地はいたって良さそうだ。かすかに輪転機のインクの臭いまで感じる。ぞっとするのは、最後の字幕で列記された「神父による児童虐待の発生地」一覧。アメリカ各州のみならず、全世界に及んでいた。
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