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反テロ・情報提供者・魔女狩り…米ドキュメンタリー『(T)ERROR』が問うもの

Posted by Ikkey52 on 05.2016 映画   0 comments   0 trackback
 一般にはあまり知られていないが、テレビのドキュメンタリー作品やドキュメンタリー映画には専門の世界市場が形成されている。たいていは映像祭形式の国際マーケットに付属しており、毎月1回程度、世界のどこかの街で丁々発止の商いが行われる。年初の1月は米サンダンス映画祭、2月はベルリン映画祭、3月はアジアASD、4月はカンヌのMIPDOC、5月はトロントのHITDOC、6月は英シェフィールドのドキュメンタリー祭といった具合だ。

 昨年のサンダンス映画祭で審査員特別賞を受けた93分のドキュメンタリーに衝撃を受けた。タイトルは『(T)ERROR』。
 金目当てにFBIの秘密情報提供者を務めたことのある元受刑者の中年男サイード・”シャリ フ“・トーレスは、まだ小さな息子をかかえ、料理人としてやり直したいが、イスラム系ゆえに職が見つからず行き詰っている。そんなとき、FBIから「ピッツバーグのイスラム社会に入り込み、テロリスト予備軍をあぶり出せないか」と新しいミッションを持ちかけられ、サイードは生活をかけて引き受ける。イスラム教に改宗した白人のカリファ・アル・アキリに目星を付け、偽名で接近したサイードだが、カリファは言葉を選び、挑発に乗らない。FBIにせっつかれてサイードはあせるが、やがて、業を煮やしたFBIが別の情報提供者を勝手に動かしたことから、カリファはFBIからの監視に気づき、サイードからの連絡を一切受け付けなくなる…。

 9・11同時多発テロ以来、アメリカ国内の治安に連邦単位で責任を負うFBIは、実に1万5千人もの情報提供者を徴募し、全米各地に泳がせて、テロリストやその予備軍の摘発に血眼になっているそうだ。しかし、素人である情報提供者が市民社会深く溶け込んでいるテロリストを突き止め、確実な証拠をつかんで摘発に結びつけるケースは必ずしも多くはなかろう。作品のタイトルが示すように、TERROR (=恐怖・テロ)の六文字を消そうとして、Tだけしか消せなければERROR (=失敗・錯誤)の五文字が無様に残るばかりだ。サイードは成功報酬をもらい損ね、追い立てられるようにピッツバーグの仮住まいをたたみ、失意のうちに帰郷して行く。

 しかし、この物語の恐ろしさはそこからだ。カリファはイスラム系市民の人権を守る団体に駆け込み、FBIから不当に監視されていると訴えた。これを受けて団体はニューヨークで大々的な記者会見を行い人権侵害の実態を暴露することにし、カリファも同席を確約したのだが、当日の会見場に彼の姿はなかった。自宅にいたところを大勢のFBI捜査員に踏み込まれ、すでに逮捕されていたからだ。テロ関与の証拠など出るわけがない。だから容疑は銃の不法所持。裁判で証拠採用されたのは何と、誰でも自由に入れる射撃場で銃を構える彼の写真だった。驚くのはそればかりではない。司法取引の条件は、有罪を認めれば懲役8年、認めなければ12年!!。カリファは取引に応じて下獄した。

 作品はサイードのモノローグ中心に構成され、彼がいらだちのあまり取材者にたびたび声を荒らげるあたりは圧巻。しかしもっと度肝を抜かれるのは、逮捕前のカリファにも密着取材し、インタビューまでモノにしていること。FBIの目をかいくぐったカメラアイは、しっかり客観性を担保していた。それにしてもイスラム・テロリストに敵視されるアメリカをテロから守るために、日々行われている治安維持の実態は、中世の魔女狩り、魔女裁判さながらだ。人種のるつぼを誇るアメリカ、人権の守護神を任じるアメリカの苦悩が垣間見えた。
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