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現場写真を執拗に分析…加藤康男『張作霖爆殺事件』

Posted by Ikkey52 on 21.2016 書評・事件   0 comments   0 trackback
 極東国際軍事裁判(東京裁判)で裁きの対象になったのは、昭和3年に起きた張作霖爆殺事件(満洲某重大事件)から太平洋戦争終結までの日本の諸罪科だ。その起点となった張作霖爆殺については、日本政府も陸軍中央も一致して、関東軍高級参謀の河本大作大佐に率いられた一部軍人たちの手によるもの、と早々と極秘裏に断定した。それを補強する河本本人の「自白手記」などもあって、戦後も長く事実と信じられ、争いはなかった。

 異論を提示したのはユン・チアン、ジョン・ハリデイ共著の『マオ』(2005年)。だが、同書が指摘したコミンテルン関与説は、のちにトロツキー暗殺に関与するスターリンの大物工作員ナウム・エイチンゴンの実名を挙げるところまでで、その論拠すらはっきりしなかった。それでも波紋は広がった。当時、スターリンのソ連が満洲利権に日本に勝るとも劣らない強い関心を抱き、しかも張作霖を邪魔者視していたことを踏まえると、コミンテルン関与説など全くありえない話、と一笑に付すわけにもいかない。

 自分は興味の赴くまま、関連のありそうな書籍が出るたび、性懲りもなく飛びついてはきたが、期待はことごとく裏切られた。そして結局、ソ連の崩壊とそれに続く混乱の一時期、封印が解かれたはずのクレムリンの極秘文書に当たらない限り、コミンテルン関与説は永遠に裏付けを欠くしかないと、半ばあきらめていた。

 目を覚ましてくれたのは、加藤康男著『謎解き「張作霖爆殺事件」』だ。この著者は、イギリスの在外公館が古くから各国でかなり高度な諜報活動を展開してきたことに注目し、事件とは直接関係のないはずのイギリスの公文書館で関係資料を探した。関東大震災に伴う朝鮮人虐殺の実態追究にもこの人は同様の手法を取っていたので印象深い。関係国以外の国の出先機関が、本国に事件概要を報告する場合、その内容は関係国のものに比べ客観性が担保されやすい。それが効果的だった。

 加藤康男についてもう一点。この人は集英社の編集者出身だが、その後恒文社に転じ専務を経験している。プロ野球ファンなら誰でも知っているベースボール・マガジン社と事実上一体の恒文社は、実はプロ野球とは縁もゆかりもない東欧・ソ連方面に強く拘泥している不思議な出版社で、そのせいか、加藤は張作霖爆殺の資料を求めてモスクワやブルガリアの首都ソフィアを歩いている。誰かに是非やってほしかったことを、ようやく加藤がやってくれた気がする。
 蛇足だが、加藤の妻はノンフィクション作家の工藤美代子で、恒文社創業者の池田恒雄の娘にあたる。恒文社の東欧・ソ連への傾きは創業者池田の趣味の反映だったといわれ、高卒後の工藤が、チェコスロヴァキアのカレル大学という意外なところに留学したのも、おそらく父の関与によるものだろう。

 寄り道しすぎて、内容を紹介する紙幅が尽きた。あえてかいつまめば加藤は、①満洲問題の解決のために張作霖殺害を決意し、犯行が露見することも恐れぬ河本ら関東軍の一部と、②国民党と敵対する張作霖政権の中枢にありながら、国民党に秘密入党していた息子の張学良ら、③そして①と②を利用して爆殺計画を遂行し、かつ日本側に責任を負わせることを狙ったソ連側工作員の高度な作戦として、事件が起きたと見立てる。
 
 論証のキーとなるのは現場写真と爆破後の現場見取り図。それらと数々の証言、手記の徹底比較が、今の資料水準ではまだ推論でしかないものに、大きな説得力を与えている。特に現場写真は一葉、二葉であれば作為の可能性もあるが、重要人物の謀殺という事件の性格に比して、残された「決定的瞬間」の枚数は少なくなく、その出所も様々だ。映像記録は、近現代史でなければありえない重要なファクターであり、それを執拗に分析しつつ筆をすすめたあたりは、第20回山本七平賞で奨励賞を受けたのも、故なきことではないと見た。
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