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「24」最新作に見る日本は?…耐えられないほど軽い存在

Posted by Ikkey52 on 05.2015 テレビ   0 comments   0 trackback
 「これまで観た映画で一番よかったのは?」といった設問にときどきぶつかる。きわめつきの愚問だと思う。比べようがないではないか。映画芸術が扱う範囲は余りに広い。時代も違えば、制作地も違う。映画の都、ハリウッドの産業を守るために、テレビドラマもハリウッドで作らせようと政策的誘導を行ってきたアメリカでは、そもそも映画とテレビドラマの区別すらないに等しい。

 米テレビドラマのアクションものでは記録破りのメガヒットとなった「24 -TWENTY FOUR-」の最新シリーズ「リブ・アナザー・デイ」を観ていて、欧米人の日本観について大いに考えさせられた。
 例によってアメリカの対テロ捜査機関CTUの元捜査官ジャック・バウワーが米大統領の命をテロリストから危機一髪、守り抜く話。今回は大統領がロンドンに外遊中、どの国の軍事システムにも自在に入り込める手段を、イスラムのテロリストが開発し、アメリカの軍艦にニセの攻撃命令を掴ませ、中国の空母を撃沈させてしまう。大統領は直ちに中国の共産党主席と電話会談し、ことの事情を説明するが、主席の怒りは収まらず、報復攻撃に出る。ターゲットは沖縄の米軍基地だ。こんどは大統領が日本の首相に電話するのかと思いきや、そんな気配さえない。大統領に同行している危機管理の幕僚たちも「日本、台湾、南朝鮮」などともごもご言うだけ。ついには、日本政府の頭越しに沖縄駐留米軍に対し、迎撃態勢を取るよう指示する始末…。基地を貸す主権国日本のプレゼンスはカケラほども見当たらない。

 すぐ連想したのは、「存在の耐えられない軽さ」という映画タイトル。原作となったチェコ人作家、ミラン・クンデラの同名小説は、ニーチェの言葉に始まる哲学的な問題作で、1968年の「プラハの春」とその反動を時代的背景に選んだものの、それに必ずしも特別な意味を見出していたわけではなかったようだ。しかし、映画で主人公トマシュを演じたダニエル・デイ・ルイスの虚無の目に気づくとき、観る者は等しく、耐えられないほどに軽い存在とは何か、深い内省にとらわれた。

 冷戦構造が固まってしまうと、東側の盟主ソ連にとって、ワルシャワ条約機構に取り込んでしまった東欧の同盟国は十把一絡げの子分に過ぎなくなった。衛星国の指導者たちの首は盟主の意のままに挿げ替え可能だったから、特別な援助もいらなくなっていった。実際、チェコではミラン・クンデラら作家同盟のインテリたちが党批判ののろしを上げ、「プラハの春」を準備したが、チェコの党第一書記ノヴォトニーに泣きつかれたブレジネフは「あなたがたの問題だ」と突き放したという。
 
 冷戦は終わったが、アメリカは新たなスーパーパワー中国の台頭に身構えなければならなくなった。「24」に登場した米軍幕僚たちが「日本、台湾、南朝鮮」と口にしたように、それらの国々はアメリカの対中国前線に打ち込まれた楔には違いないが、心強い盟友というわけではない。日本とアメリカの間には特別に密接な関係がある、と考えるのは夜郎自大というもので、「24」のメイン視聴者であるアメリカ大衆も「日本、台湾、南朝鮮」と十把一絡げにしたセリフになんの違和感を持たない。冷戦下、ソ連がワルシャワ条約機構加盟の一小国を見ていたまなざしと、いまのアメリカが抱く日本観は近似値だ。耐えられないほど軽い存在だと考えれば、日米安保体制強化云々と、いちいち目くじら立てるのも馬鹿馬鹿しいではないか。
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