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TBSは二度死ぬ…ある企業内ジャーナリストの左遷をめぐって

Posted by Ikkey52 on 27.2015 ジャーナリズム   0 comments   0 trackback
 「週刊文春」4月2日号に『韓国軍にベトナム人慰安婦がいた』と題して、スクープ記事を執筆したTBSテレビ・ワシントン支局長、山口敬之が、同社から15日間の出勤停止処分を受け、営業局ローカルタイム営業部への異動を内示された。企業に所属するジャーナリストが、自社メディア以外に執筆したり、出演したりすることは、いまどき珍しくもない。たとえ事前の届出を欠くなど社内ルールの逸脱があったとしても、降格・減給に準ずる出勤停止の制裁とはどうみても酷だ。

 それにしても見事な調査報道だった。山口は赴任先のアメリカで、約1年をかけて米国立公文書記録管理局のベトナム戦争に関する膨大な資料を調査。その中から、サイゴンの米軍司令部が、同じくサイゴンの韓国軍最高司令官・蔡命新(チェ・ミュンシン)将軍に送った「書簡」を発見した。同書簡は1969年に書かれたもので、主題は韓国兵が関与した経済事件。その中で、同事件の舞台となったサイゴン市中心部の「The Turkish Bath」(トルコ風呂)について、以下のように記されていた。「この施設は、韓国軍による、韓国兵専用の慰安所(Welfare Center)である」。http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4952
 これを裏づける元米軍海兵隊幹部の証言もある。文句のつけようがないし、実際、反論らしい反論はどこからもなされていない。

 「韓国側にやられっぱなしのところを、よくぞやり返してくれた」といった次元の低い話に、山口のスクープを落とし込むべきではない。山口が、あえてアメリカ軍の資料と格闘したのは、不毛な感情論に巻き込まれず、調査の客観性を第三国の資料で担保しようと意図したからだ。山口はあくまでもTBSの「報道特集」での露出を考えていたに違いない。にもかかわらず、結果としてTBSは山口提案を却下し、報道を許さなかった。メディア企業としてTBSの報道姿勢との齟齬を誰しも勘ぐる。

 処分と左遷が報道されたことを受けて、山口本人が発信したと思われるfacebookには苦悩が滲む。「…もう私は『TBSの記者』ではありません。なお、この異動と懲戒処分に際しては、私の週刊文春への寄稿内容ではなく、寄稿に至る手続きが問題とされました。見解の相違はありますが、今回の懲戒処分がTBSの報道姿勢に直接リンクするものではない事は、ご理解をいただけたらと思います」。

 東京新聞(=中日新聞)論説副主幹の長谷川幸洋は、社論に反して改憲派だが社内的地位を維持している。マスメディアたるもの、その程度の雅量がなければならない。まして非のうちどころのない調査報道について、企業内ジャーナリストだからといって、社の方針次第で事実さえ曲げなければいけないのか。正しいことを正しいと報ずることも許されないのか。取材結果が、右を勇気づけるのか、それとも左を喜ばせるのか、それを第一義に考えるのは、報道ではなく思想的プロパガンダの仕事だ。

 古くから朝日新聞と最も報道姿勢が似通っているとされるTBSは、朝日が慰安婦報道問題で集中砲火を浴びたのを見て、生きた心地がしなかったはずだが、辛くも矢は飛んでこなかった。しかし、今度ばかりは馬脚を現したといえそうだ。
 「TBSは死んだ」とオウム事件の際、自ら出演するメディアを叱って見せたのはほかならぬTBSの看板番組「ニュース23」でキャスターを務めていた筑紫哲也。山口はその筑紫によく反論していたという。予見や決めつけを嫌うタイプは、ともすれば流されやすい企業ジャーナリズムにとって不可欠の存在だ。だからなおのこと、優秀で良心的なひとりの特派員から天職を奪った企業の人事判断はあまりに罪深いのだ。
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