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拘束されて知った〈書き得週刊誌〉の”パキスタン売らんかな報道”

Posted by Ikkey52 on 18.2014 アジア・冒険   0 comments   0 trackback
 東京のミナモザという小劇団が昨年夏、「彼らの敵」という芝居を打ったことをネットで知った。ハッとしたのは、自分が取材の一端に関わった実際の事件が下敷きになっていたからだ。20年も前になるが、インダス川をラフティングボートで下っていた日本の大学生3人が強盗団に誘拐された。強盗団といっても、早い話が山賊。金目当てに違いないが、どう出てくるかわからない。日本人記者、カメラマンが、人質の安否報道のため、続々とパキスタン入りした。

 「当時一帯では、身代金目的の誘拐事件が多発していた。現地の日本大使館は詳細な治安状況を把握できていなかった。大学のラフティング・サークルに所属していた3名の学生は『万全の準備』をもって臨んだにもかかわらず、武装集団による誘拐・監禁という憂き目に遭ってしまったのである」と記すのは、劇団主宰者に取材したと見られる小劇場レビューのHPだ。(http://www.wonderlands.jp/archives/24525/)   
 学生たちは通算44日間の監禁のあと解放されたが、帰国後は苛酷なバッシングに遭う。バッシングの最大要因となった週刊誌記事が、事実誤認と虚偽にまみれていたというのだ。

 詳細は省くが、カラチを拠点に取材を続けた我々クルーは、犯人の強盗団と軍との交渉が持たれる場所とタイミングに関する確実な情報を入手、そこに学生たちが連行されていることも分かった。現場は緊張関係にあるインドとの国境が近く、それでなくても治安の悪い地方の交通不便な山中だが、最寄りの村にヘリで飛び待機すれば、解放後の元気な姿をキャッチできると踏んだ。ロバが行き交う赤土の村のヘリポートに降り立つと、長身の警官たちが何人も待ち構えていた。「立ち入り禁止地区に許可なく入ったので、身柄を拘束する」。ご宣託が下る。パイロットを含め全員が否応なくパトカーへ。万事休すか、とあきらめかけたが、留置場に放り込まれず、見張り付きの小さな宿に軟禁されたことを思えば、法を犯したというより予防検束ではないかと思い直した。

 現地で話されるウルドゥー語を英語にしてくれる若い通訳君も一緒に拘束されたが、彼は取材クルーのアテンドは初めてというわりに、飲み込みが早い。村に宿はもう1軒あるだけだというので、そこの帳場の女性に毎日電話を入れ、四方山話をして電話フレンドになっておけ、と指示するとしっかり実行する。拘束何日目だっただろう、通訳君が親しくなった帳場の女性から聞き出したところでは、「イスラマバードの日本大使館から予約が入り、数人がすでに到着したが、あと3人はこれから到着する」とのこと。当たりだっ、と小躍りしたかったが、かごの鳥状態は変わらない。短期滞在のつもりで、カラチにいるジャーナリスト仲間に取材費の大半をあずけていたが、決定的瞬間をモノにするまで同業者には知らせたくない。一方、思いがけない拘束の長期化で財布は軽くなるばかり。これ以上はもう宿泊費が払えない。車もめったに見かけない田舎の宿であり、国際電話やカードの利用など夢のまた夢だ。万極まって、思い出したは、カラチの安ホテルで朝な夕なに顔を合わせ言葉を交わした謎のビジネスマン。ロンドンで衣料品会社を経営し工場はこの国に持っているとか、パキスタンの旧王室の出で政府に知己が多いとか、話半分に聞いていたが、頼れるのは彼しかいない。幸運にもすぐ連絡がとれたので事情を打ち明けた。ほどなくして、我々の宿に彼から連絡があり、君たちの身柄の拘束は解かれた、宿の主人に電話を代われ、という。主人は恭しく電話の向こうに相づちをうち、宿代はあっけなく保証された。

 キツネにつままれたような拘束劇が終わってみれば、今度は週刊誌報道のバッシングが待っていた。我々が拘束されている間、交渉現場上空を傍若無人にヘリで飛んだ社があり、それを嫌った犯人側が交渉をキャンセルしたというのだ。交渉予定日には、我々はまだかごの鳥で、ヘリに乗れるわけがない。にもかかわらず、某週刊誌は我々クルーの仕業と断定し、人命軽視の軽率取材と報じた。我々の拘束自体を察知していない日本大使館筋は、馬鹿なことにでたらめな週刊誌報道を真に受けて、我々を問題児扱いする始末。いま思い返しても当時の悔しさがよみがえるが、人質となった学生たちの受けた理不尽なバッシングと、それに表立って反論できないで来た20年の月日をあらためて思うとき、売らんかなのジャーナリズムの罪深さを再認識した。
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Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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