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友ならば踏み込め  ~RKB毎日「シャッター」が欠いていたもの

Posted by Ikkey52 on 02.2013 テレビ   0 comments   0 trackback
 あれやこれやのドキュメンタリー技術論を越えて、評価に困る番組、といえるかもしれない。「シャッター ~報道カメラマン 空白の10年」。福岡のRKB毎日放送が制作したものをBS‐TBSで観た。
 
 主人公は毎日新聞を10年前解雇された元写真記者、五味宏基。解雇理由となったアンマン空港爆発事件の報道に接したときの衝撃はいまも忘れない。イラク戦争の現地取材を終えヨルダン経由で帰国しようとした五味の手荷物が、クイーンアリア国際空港の搭乗手続き中に爆発し、警備兵が1人即死、4人が重軽傷を負った。五味は、イラク戦争の地で拾ったクラスター爆弾の子爆弾を単なる金属片と勘違いし記念品として日本に持ち帰ろうとしていた。空港で爆発せずに、五味が乗り込むはずだったエジプト航空機の機内で爆発していたら、と考えただけでそら恐ろしくなる。
 
 少々右っぽい言い方をするなら、まさに「国辱もの」だった。五輪でメダルに輝いた同邦人を誇らしく思う気持ちと正反対の、恥ずかしさと情けなさを感じた人が多かったのではないか。事件の当事者としての五味個人への関心など一瞬で消えた。その間、五味は逮捕され、懲役を宣告され、国王の恩赦で救われ、帰国して会社をクビになっていた。
 
 五味を取材対象に選んだのは毎日の同期入社組で、今はテレビマンに転身したRKB毎日放送・テレビ制作部長の神戸金史。馘首後の数年間、五味は贖罪の意味からカメラを封印し、家計を支える妻の勤務地であるタンザニア、エジプトで子育てと主夫業に励むが、やがて再びカメラを手にする。そこは重要な転機だが、「時間が経った」という説明だけでは身もふたもない。もう一度カメラを手に取ろうとした五味の内面が語られない以上、ドラマといえるドラマはないに等しい。あえてプロデューサー目線でいうと、これではまとめようがなく、したがって放送のメドも立たない。番組のプロデューサーとディレクターを神戸が兼ねていることは、社内の逆風の強さを物語る。
 
 番組の導入部で五味は、福岡のホスピスに通いつめ末期がん患者とその家族から信頼されたヒューマンなカメラマンとして登場する。問題のイラク取材でも弱者の立場に立った数々の写真をものにし、新聞協会賞の候補にも取りざたされるほどだった、と紹介される。いい人、子供にやさしい目を注ぐ人、弱者にも分け隔てなく接する人…。制作者である神戸が提出するこうした視点は、まるで今にも潰れそうな廃屋をかろうじて支えるつっかえ棒のように、何度も差し挟まれる。自らも事件の責任の一端があると感じ、五味の苦悩に寄り添おうとする上司だった元写真部デスク。事件の後処理に直接携わり、今や「毎日」の主筆に上り詰めたかつての外信部長。そして写真記者として五味が手掛けた仕事ぶりの客観的評価者として立ち現れる大谷昭宏と津田大介…。どれも、神戸の視点の補強材料として使われる。同様に、五味の贖罪意識がもっぱら事件被害者個人に向けられる形でくどいほど語られる。
 
 おかしい。何かおかしい。五味が贖罪意識を引きずるヨルダンでの事件で、金属片をまるで戦利品よろしく日本に持ち帰ろうとしたとき、いささかの英雄気取りもなかったか。評価される仕事をやり終えた全国紙の特派員として、おごり、気の緩みはなかったか。神戸が制作者として、どうしても五味に聞かなければならないのは、最低限、その一点だ。それが聞けないのなら、神戸はジャーナリストというより単なる五味のお友達にすぎない。辛辣な質問者の役割を、誰か別のメディア・ウォッチャーに託す方法もあったが、それもやっていない。本来、その問いと答こそが番組の背骨になるはずだろう。
 さらにいえば、マスメディア全体の信頼を失わせたことへの反省の言葉が聞けなかったのはなぜか。東日本大震災と福島第一原発事故で拡散したマスメディア不信を、遠景として提示するだけでは、制作技術上のアリバイと見られても仕方がない。
 
 罪は犯したが、それを十分に悔いている人間に、再起のチャンスが与えられるのは当然だ。それはそれとして、制作者の神戸が素朴に信じるように、「写真」はウソをつかないのだろうか。というのも、人のあら捜しが得意なある週刊誌が、五味が自分の下半身を業務用大型コピー機のガラス面に押し付けて複写するかのような、悪ふざけ写真を掲載しているからだ。今でいう「馬鹿バイトの不適切写真」に類するもので、事実ならば五味の人格を疑わせるのに十分だ。番組構成上の制約はわかるが、「写真」とは何かを考える意味で、五味の釈明が聞きたかった。  
 
 TBSはRKB毎日のローカル番組をBSで全国放送するにあたって、内容を不安視した。自分がプロデューサーでも本編があの内容では、不安でたまらなかったはずだ。そのため、オリジナルな内容に、あえて制作・放送サイドのエクスキューズ(大谷、神戸インタビュー)を長々付加して流さざるを得なかったのだろう。天下のTBS報道局の弥縫策は果たして成功したのか。さて、視聴者の評価はどうだろう。
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