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アシュケナージという存在

Posted by Ikkey52 on 25.2013 近現代史   0 comments   0 trackback
 「ディアスポラ」というのは、帰るべき故郷のない民を意味するヘブライ語だ。これに対して、「アシュケナージ」は、ディアスポラであるユダヤ人のうち、主に東欧、ウクライナなどに定住した人々を指す。名曲「サンライズ、サンセット」が挿入歌として流れるミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』は、帝政ロシア支配下のウクライナで、ユダヤ人村に暮らす牛乳屋一家の話だった。彼らこそまさにアシュケナージの実像だ。「アシュケナージ」をそのまま姓にしているロシア人、東欧人は珍しくないが、ポグロム(ユダヤ人に対する集団迫害行為)が頻発した時代、アシュケナージ姓ではさぞかし生きにくかっただろう。牛乳屋一家もユダヤ人排斥で村ぐるみ追い出だされ流れてゆく。

 ユダヤ人=ヘブライ語を操る人、という思いこみから、アシュケナージの間で交わされてきた「イディッシュ語」は当然ヘブライ語の一種なのだと長いこと誤解していた。本当は、ヘブライ語やスラブ語の単語が混じっているものの、「イディッシュ語」は言語的な分類としては標準ドイツ語の一方言だそうだ。
 
 断続的に起きるポグロムと交通手段の発達が相まって、19世紀後半からアシュケナージ系ユダヤ人の移住先にアメリカが選ばれるようになった。その玄関口となったのが、ニューヨーク湾口に浮かぶエリス島。そこには不法移民をチェックする移民管理局があって、いたって不愉快な身元確認が待っていた。安住の地を探しに来た人たちは、伸び盛りの資本主義が貪欲に求める格好の労働力として、次々と大都会ニューヨークの片隅に吸収されていった。当然、イディッシュ語を共通項とするコミュニティーが生まれ、アメリカ社会に根を持った新しいイディッシュ文化も芽を吹いた。フォークソングの女王、ジョーン・バエズの歌で有名な「ドナドナ」は、ウクライナ生まれのアシュケナージ系ユダヤ人作曲家が作ったイディッシュ語の曲が元になっている。

 アシュケナージ系ユダヤ人に対する迫害は、ナチス支配地区のそれが比較的新しいが、それにしても時が経った。当時、命の危険が及ばない新天地としてアメリカを選んだ移民も、一世はほぼ死に絶え、二世、三世の時代になった。ロッド・スタイガーの名演技が思い出される映画『質屋』さえ、調べてみると1960年代の公開だ。例えば、バエズの名前が出たから、歌手で探してみると、大都会ニューヨークの粋を歌わせたら当代一流のビリー・ジョエルがいる。父はドイツから逃げてきたユダヤ人、母はイギリスのユダヤ人家庭の出で宝石商が稼業。本人はサウス・ブロンクスに生まれ、ロングアイランドの新興住宅で育ったというから、絵に描いたような在米アシュケナージ二世だ。
 彼の出世作のタイトルは、イントロの口笛が物悲しい「ストレンジャー」。それを「アシュケナージ」の暗喩と取るのは、さすがにちょっと考えすぎか。
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