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放射性物質が招く森林の衰退

Posted by Ikkey52 on 28.2015 原発   0 comments   0 trackback
 少々文学的な言い方を許してもらえば、「人間は食べた物と読んだ物でできている」。では、森林はなにからできているのだろう。福島第一原発事故によって、大量の放射性降下物が降り注いだ川俣町や飯舘村の初夏の森を、事故の翌年から3年間、観察した昆虫学者がいる。北海道大学農学研究院教授の秋元信一だ。『グリーンパワー』2015年8月号に秋元が執筆した「福島報告」から紹介する。

 秋元を驚かせたのは、線量の高い地域ではモンシロチョウ、スジグロシロチョウなど普通腫のシロチョウ類が全くというほど見られなかったことだ。また、ニセアカシアが花盛りだったにもかかわらず、花を訪れるミツバチを一匹も確認できなかった。

 秋元は、ハルニレの葉に虫こぶといわれる閉鎖空間を作るアブラムシに注目した。もし、アブラムシに形態異常(奇形)が生じていても野外ではすぐ淘汰され観察が難しい。だが、虫こぶなら閉鎖空間なので、奇形の個体も残り続ける。虫こぶを開くと、脚の一部を失っているものや、脚の関節から瘤状のものが突出している個体、あるいは腹部から二つにわかれているものなど、かなりの頻度で奇形が見つかった。

 ところが、奇形が多かったのは、2012年だけで、13年、14年のサンプルには程度の高い奇形は認められなかった。アブラムシの有性生殖は年一回だけ秋に行われる。つまり、原発事故後はじめての有性生殖から生まれた子孫に奇形が多発していたことになる。
 
 「では、放射性物質の影響は初期の一撃だけにとどまるのだろうか」と秋元は自問した。チェルノブイリの高線量地域ではいまだに、土壌無脊椎動物、つまり、ミミズ、シロアリ、バクテリア、菌類などが大きな影響を受けており、森林内の落ち葉の分解がうまく進んでいないことが報告されている。一方、フクイチからの降下物が降り注いだエリアの森はいま、放射性物質が主に地表表面の土壌に留まっている段階と考えられる。もし、チェルノブイリで起きていることが福島の森でも起こりうるとすれば、樹木に必要な栄養が十分供給されないために、森はゆっくりと衰退へと向かうことになる。

 秋元によれば、「国内で起こったこの環境の激変は、人類未踏の研究領域」だ。生命に対する内部被曝の問題に、人々の関心はようやく向くようになったが、地域固有の生物多様性に支えられ、育まれた森林という環境が、放射性物質の二次的、三次的影響を受けて、じわじわと長い年月かけて蝕まれるという問題は、まだ一部の心ある研究者が警鐘を鳴らし始めた段階だ。それこそ研究の多様性が待たれる。

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Author:Ikkey52
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父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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