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身内だからわかる…『朝日新聞~日本型組織の崩壊』

Posted by Ikkey52 on 14.2015 ジャーナリズム   0 comments   0 trackback
 売れ行きがいいので、朝日新聞批判書は数々世に出されているが、かなり歯ごたえのある一冊が文春新書から上梓されている。『朝日新聞~日本型組織の崩壊』がそれだ。目新しく映るのは、朝日危機の本質をイデオロギーではなく企業構造に求めていること。であれば、内部からの視点が不可欠になる。執筆したのは、「所属する部署も年齢も社内における経歴も異なる」朝日新聞記者有志。二十年以上前の慰安婦報道にも触れるため、辰濃哲郎〈無断録音と第三者漏洩で懲戒解雇〉のようなOBも混じっている。そういう本だから、自分の知る限り、これまで朝日新聞の書評欄には取り上げられていない。

 まず、吉田調書関連。朝日は14年5月20日の初報から三日間、立て続けに「朝刊一面スクープ」を掲載したが、第一報「命令違反」に対して、どのライバルも追ってこないことに相当焦ったという。それもそのはず、吉田は生前、匿名での発言を含めて、様々なメディアの取材を受け、内容はすでに報道されていた。他社は、朝日記事のリードと本文のずれが誤報まがいであると知っていたのだ。翌日の第二報「ドライベント」は、11年4月から5月に各メディアが報道済み。第三報「非常冷却誤対応」も、11年夏にはNHK、毎日、読売がすでに書いていた。誤報と既報に過ぎない「連続スクープ」がなぜ社内で新聞協会賞候補にまでなってしまったのか。しかも第一報にいたっては東電社員のただ1人にさえ直接取材していないのだ。
 「その理由はただ一点、木村社長が『絶賛』した記事だったことにつきる」と筆者はいう。「上意下達が支配する官僚組織では、何も考えないのが得策だ」。

 朝日は、本多勝一に代表される左翼イメージを、70年代の後半、右派ジャーナリズムによる新聞批判を受けて、徐々に薄めようとしたらしい。冷戦終結と本多の退職を契機に、90年代から脱イデオロギーは一層すすんだが、左翼色を抑えるための管理強化が、自由にものをいう気風を奪ったという。筆者らは「朝日の読売化」だというが、論調の隔たりはあっても、いまのところ読売の記事に朝日のような大きな躓きは見いだせない。こういう受け止め方それ自体に、朝日の鼻持ちならない選民意識を感じるのは自分だけだろうか。

 筆者らは、今日の朝日の病巣の根を、企業支配を巡る権力闘争とそれによるモラルハザードの歴史に見る。1960年代の村山社主と広岡知男社長との対立にはじまり、渡辺誠毅社長時代の左派と広岡グループ(中道左派)との軋轢、コストカッターといわれた箱島信一社長の登場と編集への介入、強まるコンプライアンス管理と密告奨励制度の導入、声を上げにくい社内の空気の反映である社外への情報漏洩、特に役員クラスによるタダ漏れなど、内部にいる者でしかわからない指摘も多く、それなりの説得力がある。ただ、よく考えてみれば、新会社法による「普通の会社化」圧力は、どの報道機関にも例外なくかかっているのであって、朝日記者の取材活動だけがやりにくくなっているわけではない。あれもこれも会社体質のせいにされると、いささか鼻白む。
 
 かつてない社会的批判を浴びて、部数減も指摘される朝日。新聞本業部分の収入は減り続け、コストカットは今後も必死だ。それで取材網が縮減される分は、支配株にものをいわせてテレビ朝日系列局に肩代わりさせ、現在の「全国紙」から効率のいい「主要大都市圏紙」に軸足を移しつつ、最後は紙媒体からデジタル媒体への大転換に賭けようという作戦だろう。筆者は、紙主体の経営は東京五輪あたりで限界になると見ている。
 一方、保有資産の面から見ると、他の全国紙と比べて、群を抜く強さを持ち続けている。2014年3月期の短期借入金は15億円しかなく、現預金は600億円もある超優良企業だ。大阪・中之島のツインタワーのうち、すでに完成した一棟は、無借金で建てた。二棟目も稼働すると、その賃貸収入はあわせて年間百億円に上る予想だ。

 通読して感じるのは、「普通の会社化」の必然として生じる利益第一主義が、朝日の最高幹部たちの思考様式にすでに深く浸透しており、しかも彼らのポジションは強固な官僚主義的人事制度によって守られているということだ。査定時の13もの区別、それに基づいたカーストと呼ばれる差別待遇など、まさに官僚制そのものではではないか。ともあれ、執筆した有志たちが最も恐れているのは、健全なジャーナリズムを放棄した「不動産屋・朝日」としての生き残りであるように思えた。
  

プロフィール

Ikkey52

Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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