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見世物討論番組の演出論…朝生「朝日の慰安婦問題編」を例に

Posted by Ikkey52 on 29.2014 テレビ   0 comments   0 trackback
 テレビで行う討論は「見世物」になっていなければならない…。日本で初めてそう喝破したのはテレビ朝日の名物プロデューサーだった故・日下雄一と田原総一朗。そして、そのポリシーを実務で支えたのはフリー・ディレクターの吉成英夫だったのは間違いない。「朝まで生テレビ」の成功を横目に見て、他局が二匹目や三匹目のドジョウを探さなかったのはなぜか。集めてくることさえ容易でない猛獣たちを、十数人が座れる楕円のテーブルと3時間弱の時空の檻に押し込めることがそもそも並大抵ではないし、まして、そこに喜んで入ろうという猛獣使いなど田原という特異なキャラクターをおいて見当たらなかった。そういうことではなかったか。言葉を代えれば、今日まで300以上の回を重ねることができたのは、「一点もの」の番組だったからだ。

 田原の老いにつれてパワーダウンは否めない最近の「朝生」だが、朝日新聞の一連の誤報訂正と謝罪に焦点をあてた28日の「慰安婦問題とメディアの責任」は、久々に動物園らしいかまびすしさに包まれた。朝日が唐突に行った8月の慰安婦検証報道をひと月以上もニュースにせずネグってきた、と火の粉を浴びているテレビ朝日にとっても、「タブーに挑戦」を謳うこの番組で同問題を取り上げるタイミングが遅れることは、絶対に避けなければならない。

 討論をエキサイティングな「見世物」にする演出の主要部分は、実はキャスティングそのものだ。今はどうなっているのかわからないが、かつて田原は、六本木に個人サロンを持ち、面白そうな学者、文化人、政治家、ジャーナリストを招いて人脈づくりをやっていた。「朝生」のパネリストとして耐えうるか否か、値踏みをしていたわけだ。いわば猛獣の餌場だ。そこまでやっていた。生放送で本音を語れる識者など、当たり前といえば当たり前だが、とうの昔から絶滅危惧種。見つけるためには大きなエネルギーを費やしていたのを知っている。

 今回の「朝生」。パネリストの人選に苦労のあとが偲ばれる。「見世物」に仕立てるため、攻める側に理論派は多すぎるといけない。学者の論議は聞きたくない。まず攻める側を象徴して産経OBの山際澄夫を置く。感情的な発言者であり、キャラが立っていてテレビにぴったりだ。あわよくば場外乱闘気味に産経対朝日の遺恨試合も見込める。元NHKディレクターの池田信夫も雄弁だが、イデオロギーの臭いはないから山際とは違う攻め口が期待でき、事実その通りになった。特に「強制連行説」捏造の疑いがかかる元朝日の植村隆とパラレルな関係で韓国取材をしていた話は初耳だった。現代史家で、吉田証言否定の功労者でもある秦郁彦は、今度の記事取り消し問題の真打であり、いなければ始まらない。一方、守る側は現役の朝日人士だと出にくいし、また出しにくい。片言隻句を捉えられたくないから物言いが慎重になり、下手をすれば反論さえ自重するだろう。そこで、OB、OGが立てられる。卒業生は無責任だからいい。早野透、山田厚史、下村満子という顔ぶれ。早野は、名物の政治コラムの書き手だったが、朴訥な風貌、口調に似あわず、けっこう戦闘的で、論敵にジャブを放つなどしながら朝日の建前を守ったのが狙い通り。下村は、アジア女性基金のメンバーだったので、秦と同じく同席しないと画竜点睛を欠く。現役記者当時から田原サロンの主要メンバーだった山田の裏の役割は、猛獣使いである田原のアシストだったが、今回は他の猛獣たちの声が大きかったため、せいせい産経の過去に触れ山際を挑発する程度しか存在感を示せなかった。状況からして朝日のOB、OGは今回、大所高所からのジャーナリズム論は吐きにくいのを見通して、朝日センスに近い元共同通信の青木理を配してそのあたりの発言は代行させた。

 軸となる二陣の対立を、より鮮明にするための脇役は、「見世物討論」のキモとなる。政界からは、自民の平沢勝栄と民主の大塚耕平が参戦。といっても高みの見物にとどめていたところに演出力が見える。討論が性別、年齢と問わない形に見えるよう若い女性も呼ばねばならない。この日は作家、吉木誉絵。彼女が良かった。祖母世代の下村満子が語る情緒的慰安婦論にがぶっと噛みついた。もっと語らせたかった。味を出すという意味では、ネット系の大御所、津田大介も座らせて正解だった。出番の少なかった津田だが、「ネットの批判がなかったら、朝日は誤りを認めていたかどうか」との一撃は起死回生だった。最後になったが脇役の重しとしてあらかじめ配されたのが、東京・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋。正確な表現は忘れたが、吉田証言にしろ吉田調書にしろ、「スタンスありきの報道だった」との趣旨を語っていた。「東京新聞はアカハタより左と言われた」と軽く自虐をかましたとはいえ、自社の話を棚に上げて「よく言うよ」なのだが、早野が明確な反論をしかねているのがわかって、期待値に応えたな、と見た。
  

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Ikkey52

Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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