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凝視する辺見庸…復興応援ソング「花は咲く」をめぐって

Posted by Ikkey52 on 24.2013 ジャーナリズム   0 comments   0 trackback
 尊敬するジャーナリストのひとり魚住昭が、「日本のノンフィクションの白眉は?」と尋ねられて、本田靖春の『誘拐』と『不当逮捕』の名を挙げているのを何かで読み、思わず膝を打った。マスメディアが組織的に行う調査報道を別にしても、日本には優れたノンフィクションが星の数ほどあり、どれが一番か、と聞かれたら答えに窮するが、本田のいくつかの仕事を思い浮かべる人は少なくないのではないか。自分も同じ道を志す若い人に盛んに勧めた一時期がある。

 本田の諸作品とはフィールドが違うが、辺見庸の『もの食う人びと』もまた、頂点のひとつに数えられてもいい仕事だと思う。もう20年も前に上梓された作品だが、特にチェルノブイリのくだりは、そのままフクシマ問題を抱えるいまの日本への不吉な予言になっている。3・11以降、盛んに再読されたはずだ。その辺見が、このごろのこの国を覆っている空気に対して、強烈な違和感を表明している。違和感の象徴は、NHKの震災復興応援ソング「花は咲く」だ。以下、毎日新聞に掲載された辺見の発言を、実直な人柄がにじむ読書家のHP「SUMの日記(日々是・・)」から孫引きする。
http://sum755778.blog.fc2.com/blog-date-201305.html
 「俺はあれが気持ち悪い。だってあの歌って(戦時中に隣組制度を啓発するために歌われた) 『とんとんとんからりんと隣組』と一緒だよね。そう思って書いた部分を、編集者が『書き換えてほしい』って言う。文芸誌で何を書こうがいいじゃないか、なぜ遠慮しなくちゃならないのかって言うと、 『あれはみんながノーギャラでやってて、辺見さんも自作をちゃかされたら嫌でしょ』と。もう目をぱちくりするしかないよね」

 真実の追求をおろそかにし、美談とエールに逃げ込んでいったマスメディアの3・11以後のなさけない状況が、あの歌の情緒的な歌詞とメロディーとにダブってくる。一方、辺見は宮城県石巻市出身。故郷を震災でやられた当事者のひとりとして、被災地を見つめる。そして、歌の持つ欺瞞性を以下のように撃つ。

 「芸能タレントとテレビキャスターと政治家が我も我もと来て、撮影用に酒なんか飲んだりしてね。人々は涙を流して肩を組み、助け合ってます、復興してます、と。うそだよ。酒におぼれ、パチンコ行って、心がすさんで、何も信用できなくなってる人だって多い。PTSD(心的外傷後ストレス障害)ね。福島だって『花は咲く』どころじゃないんだよ。非人間的実相を歌で美化してごまかしている。被災者は耐え難い状況を耐えられると思わされてる」

 被災地で「酒におぼれ、パチンコ行って、心がすさんで、何も信用できなくなってる人」は例外中の例外で、ほとんどの人は逆境にもめげず、希望を捨てずに前を向いて生きているのか。違う。目標を見失った人たちの存在は、意図的に報道されず、無視されているだけなのではないか。震災復興応援ソング「花は咲く」は、マスメディアがねつ造した「美談とエールに満ちた被災地」というデマゴギーの片棒を担ぐ形で、現実を見えにくくする煙幕の役目を果たしているのだ。
 違和感の実相を凝視するうち、辺見はそれが全体主義であるのに気づく。全体主義は、何も独裁者に鼓舞されて生まれるものではない。「そんたくや自己規制、自粛といった日本人の“得意”な振る舞いによって静かに広がっていくということだ」。大衆運動や個人の行動がコラージュのように積み重なって、全体主義に至るという、辺見の理解に強い説得力を感じた。
  

プロフィール

Ikkey52

Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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