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アクション映画の批評は無粋か 「メカニック」

Posted by Ikkey52 on 28.2011 映画   0 comments   0 trackback
 かつて、東映やくざ映画を、階級的、哲学的、現代史的に大真面目に論じた評論家たちの時代があった。アクション映画の批評は無粋である、などと決めつけたら張り倒されそうな恐怖がいまでもある。「スーパー・ハード・アクション」なるキャッチも勇ましい、ジェイソン・ステイサムの最新作「メカニック」を試写で見る機会があった。

 機械いじりに強いことから、たぶん工兵という意味で「メカニック」と呼ばれている殺し屋のアーサー・ビショップ。しゃれたコテージを、ボートでしか近づけないニューオリンズ大湿原の奥深くに構えて、用心深く住んでいる。
  アーサーの腕前がどんなものか、映画冒頭の一幕がすべてを物語る。ターゲットは南米コロンビアの麻薬王。自家用ジェットで同国奥地のホームタウンに帰り着いた麻薬王は、城のような居宅で大勢の使用人に迎えられる。屋内プールで夕食前のひと泳ぎとしゃれ込んだ麻薬王。そんなときでも、周囲は、マシンガンを手にした、いかついボディーガードたちで、蟻の這出る隙もないほど固められている。アーサーはあらかじめアクアラングをつけて屋内プールの底に潜み、麻薬王を水中に引き込んで窒息死させる。ボディーガードらが異変に気づき、邸宅全体が大騒ぎになる間に、地下室で召使の衣装に早変わり、もぬけの殻になったキッチンを抜け、戸外に走り去る。やがて大河に架かる橋の上からドラム缶運搬の小舟めがけてダイビング、舟の艫(とも)にしがみつき、濁った水に体を隠して現場をゆうゆう離れた。
 ビジネスに私情を挟まないのが信条のアーサーは、あるとき、仕事の供給先である「カンパニー」から、自分自身の恩人であり、組織の一員でもあるハリー(ドナルド・サザーランド)の裏切りを明かされ、指令通りハリー殺害を実行して、自動車強盗の仕業に見せかける。心が騒ぐアーサーは恩人の墓参に向かうが、そこでハリーの息子と出会い、深く関わることになった…。

 墓地のシーンで、ちょっと考えてしまった。アメリカの他の地方の墓地とは全く趣が違っている。墓自体は、中国や沖縄の金持ちのように家を象(かたど)っており、亡骸は墓の下ではなく前庭にあたる部分に浅く埋める。何か特別な宗教か、とも疑ったが、ニューオリンズには地理的な事情があると知った。つまり、町全体が「スープ皿」と呼ばれるほどの低地にあり、水面以下の土地もある。だから、地下には埋められないという。

 演出が荒っぽすぎて違和感がある。たとえば、アーサーが落ちぶれた闇ブローカーを絞め殺したあと、自殺に見せかける細工までやるのに、パソコンやドアノブを自分の指紋だらけにしたまま現場を去る。大都会の真ん中で戦争ごっこをやっても、ポリスはストでもやっているのか、パトカー1台追いすがってこない。つまりご都合主義である。

 この「メカニック」、1972年にチャールズ・ブロンソン主演で公開された同名映画のリメイクという。とびきり特異なストーリーとも思えないのに、リメイクが実現したのにはわけがある。39年前のオリジナル作をプロデュースしていたアーウィン・ウィンクラーとロバート・チャートフの2人が、最新作ではともに製作総指揮に立ち、プロデュースをそれぞれの息子であるデビッドとビルの2人組にゆだねたのだ。つまり、親父たちの過去の栄光に、息子たちがひれ伏す構図だ。ハリウッドをハリウッドたらしめてきた、偉大な構想力の枯渇がいわれて久しい。事実なのかもしれない。

 ブロンソン版「メカニック」について、充実したデータベースでもある映画パンフレット研究所のサイトにあたってみと、絵柄にかすかな記憶があった。「典型的なブロンソンイズムにあふれた作品」との評価を裏読みすると、「新味に欠ける」ということか。
共演のジル・アイアランドの名が懐かしい。ブロンソンの後妻になった人である。安っぽい、蓮っ葉な役どころが多い脇役だった。PCに「ジル・アイアランド」と放り込んで、何枚も出てくる写真の中に、ジルとは似ても似つかない、ショートヘアの理知的な女性が混じっていた。彼女は、マルレーヌ・ジョベールというフランス女優。フランシス・レイがテーマ音楽を担当したルネ・クレマン監督の映画「雨の訪問者」で、ブロンソンの相手をしたから、若い発信者が混同したのだろう。

 横道に逸れた。この手の映画は、ぐだぐだ言わずに楽しむもの。ネガティブなことも書いたが、ステイサム版「メカニック」は、テンポがあって小気味よく、少なくとも漫然としたところがない。ストレスの溜まる節電の真夏に封切られることになるが、浮世の憂さを、いっとき忘れさせてくれるのは確かだ。
  

プロフィール

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Author:Ikkey52
ジャーナリスト 札幌生まれ
父方は、奈良十津川郷系+仙台伊達藩亘理系。母方は東三河豊橋系+肥前鍋島藩系+加賀藩系

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